2023.08.07 05:00
シリーズ中級講座 7
統一思想入門講座
「統一思想とは何か」<7>
世界家庭誌で2021年11月号から2022年12月号までの期間に掲載された「中級講座シリーズ」の内容を、「シリーズ中級講座」のタイトルで毎日朝5時にお届けすることになりました。信仰生活の向上、毎日のみ言学習にお役立てください。
統一思想研究院
木南章良・首席研究員
天意と民意の両方で政治家を選出する
次に「共栄主義」についてお話しします。
共栄主義は理想社会の政治的側面を扱った概念であり、民主主義に対する代案です。民主主義は、一言で言うと、人民が主人となって政治を行うという思想です。人民の自由と平等を実現するための理念でしたが、今では、ほころびが見えてきています。
2021年1月、米国のトランプ大統領(当時)を支持する人々が起こした「米連邦議会議事堂乱入事件」は、民主主義がいかに弱くなってきているかを如実に示しました。「ポピュリズム」という大衆迎合主義も民主主義の大きな問題です。
フランスの経済学者ピケティは『二十一世紀の資本』の中で、資本主義には、貧富の格差が拡大するという根本的矛盾があると言いました。そのような経済的不平等が、現在、政治的不平等につながっています。実際、日本の現行の選挙制度では、選挙に多額のお金が必要です。
そのような課題を踏まえ、共同政治に関する理論として共栄主義が唱えられているのです。その趣旨は、「代議員選出を通じた万人の政治参加」です。それは間接政治の一つの形態です。ギリシャ時代の直接政治制ではなく、選出された代表を通して国民が政治に参加します。
それなら、今日の民主主義政治と何ら異なるところがないのではないかと疑問が生じるかもしれませんが、代表者の選び方に違いがあります。それは、「天意と民意の両方による選出」です。
第一に、代議員選挙の立候補者たちは、ライバル関係ではありません。真なる愛を中心として、神の代身者であるメシヤを人類の父母として侍って生活する兄弟姉妹、家族的な関係です。
第二に、自分の意志で立候補するのではなく、多くの隣人(兄弟姉妹)から推薦を受けた人が出馬します。「あの人に次の政治家になってほしい」と、多くの声が上がった人が出馬するのです。
そこで三人が出馬したとすると、最終選抜は三人によるくじ引きとなります。厳粛な儀式を行い、「この三人のうち、私たちの代表として最もふさわしい人を天がお選びください」と切実に祈ったうえで、当たりくじを引いた人が当選します。“その人こそ、天意が最も反映された存在である”と見なすのです。
また、権力分立の在り方が違います。皆さんは、フランスの哲学者モンテスキュー(1689〜1755)によって説かれた「三権分立」の考え方をご存じだと思います。歴史上、権力を握った者が悪政を行うことが多くあったため、権力の乱用を避けるために立法、司法、行政の権力を三分し、お互いに牽制して、チェックする制度が生まれたのです。
共栄主義における三権分立は、円満な調和のための「三府の業務分担」と考えます。お互いを牽制するのではなく、大きな「共通善」(創造目的)を成すために、業務を分担して協力し合うのです。
真のお父様はさらに、三権ではなく、「言論」と「銀行」の二つの権力を加えた「五権」とならなければならないと語られました。
「立法、司法、行政と、言論、金融まで合わせて、五つの機関を中心に、国連の憲章を改正するための準備をしています。立法、司法、行政、次に第四権として言論界が入ります。その次に第五権が金融界です」(『真の父母経』1522ページ)