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シリーズ中級講座 5
統一思想入門講座
「統一思想とは何か」<5>

 世界家庭誌で2021年11月号から2022年12月号までの期間に掲載された「中級講座シリーズ」の内容を、「シリーズ中級講座」のタイトルで毎日朝5時にお届けすることになりました。信仰生活の向上、毎日のみ言学習にお役立てください。

天の父母様との心情的距離を近づける思想

 祝福二世の皆さんや、最近、教会に導かれてきた方の中には、初めて「統一思想」に触れるという方もいるかもしれません。そして、「思想」と聞くと、何か堅い、難しいようなイメージで受け止め、敬遠したくなる方も多いのではないでしょうか。

 しかし、実際に統一思想を学んでみると、天の父母様(神様)との心情的な距離がぐっと近づくことに気づくはずです。それは、統一思想が“人間の頭から出てきた考え”ではなく、天の父母様の愛や深い心情世界を、そのまま言語や理論として形に表しているものだからです。

 私たちが生きている現代社会は、思想や価値観の対立のゆえに混沌としています。それゆえに、たとえ、み言を学んで感動し、信仰を持つに至った祝福家庭や食口(シック)であったとしても、その影響を大きく受けているのではないでしょうか。

 だからこそ、真のお母様から“2027年までに、全人類の3分の1を天の父母様、真の父母様につなげる”という願いを受けた私たちは、いま一度、統一思想を学ぶことを通して、天の父母様の深い愛と心情に触れていく必要があると思うのです。

 今回は、統一思想研究院の木南章良・首席研究員が、初めて統一思想に触れる方のために整理した入門講座の後編です。

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統一思想研究院
木南章良・首席研究員

統一思想の目指す理想世界、理想国家とは

 文鮮明(ムン・ソンミョン)総裁(真のお父様)のご指導のもと、統一思想を体系化したのが李相軒(イ・サンホン)先生(36双)です。そして、李相軒先生が著した『統一思想要綱』は、神の創造の順序に従って項目が配列され、下の表のように11章から成っています。ここでは二つの内容(原相論、共生共栄共義主義)について説明します。

宇宙の根本存在をどのように理解するか

 原因者である神は、「性相と形状の二性性相の中和的主体」として存在しています。性相と形状を、分かりやすく人間に当てはめて言えば、心と体となります。神が心と体を持っているので、被造物も、“心的なもの”と“体的なもの”の両方を持って存在しているのです。

 宇宙の根本存在に対する考えとして、「精神が元で、そこから物質的なものが出てきている」と唱える「唯心論(観念論)」や、「精神は物質からできた」と主張する「唯物論」があります。統一思想では、それらを統一した「唯一論(統一論)」という立場を取ります。

 それでは、唯心論の代表格であるキリスト教神学において、神をどのように説明しているのか見てみましょう。

 「神は物質的な実体ではなく、霊的な存在なのである。イエスは『神は霊である』(ヨハネ四・24)と言われた」(ヘンリー・シーセン『組織神学』197ページ)

 これは、アウグスティヌスやトマス・アクィナスの神観「神=精神(性相)のみ」に基づく考え方です。このように、宇宙の根本存在を「性相のみ」と捉えた場合、現実的にはどのような問題が生じるでしょうか。

 精神、死後の世界のみを重要視し、物質的な現実世界を軽視するようになります。すると、地上で起きる問題は大部分が物質と関連するため、解決は不可能になります。「天国に行く」という、死後の世界の救いを強調するあまり、現実の問題に対応できないキリスト教社会となってしまい、そこが、神を否定する唯物論の温床となったのです(『原理講論』27ページ参照)。

 逆にカール・マルクス(18181883)によって確立された共産主義唯物論は、神を否定し、「宇宙の根本は物質であり、精神は物質の所産である」と唱えます。精神文化を軽視し、宗教や倫理・道徳といった価値観を封建社会の遺物と見なすのです。そして、「動物が進化したのが人間」「人間も物質にすぎない」という人間観のもと、指導者に従わない人間を良心の呵責(かしゃく)なしに粛清してきました。

 真のお父様は、ご自身が共産主義政権下で監獄生活を余儀なくされ、生き延びてこられました。そのうえで、共産主義の本質についてこのように述べておられます。

 「共産主義が人類に対して犯した最大の罪悪は、その思想が神様を否定するだけでなく、人間を動物視するところからくるものです。……共産主義を信奉する国々では、人権の尊厳性は、驚くべきことに体制自体によって根源的に否定されているのです」(『平和経』1209ページ)

 共産主義国家には、恐ろしい「粛清」の歴史があります。ソ連では、スターリンによって1937年からの2年間で69万人が、カンボジアでは、ポル・ポトによって1975年からの3年間で300万人が粛清されました。

 『共産主義黒書』(1997年、ステファヌ・クルトワ〈仏〉)では、共産主義思想のもと、独裁と粛清、大量虐殺により一億人が犠牲になったと記しています。また、フランスの「ル・フィガロ」紙(19781118日付)は、全世界で15千万人が共産主義によって犠牲になったと報じています。

 日本では、1972年に浅間山荘事件が起きましたが、それ以前に、29人の連合赤軍メンバーのうち12人が山岳ベースで殺されています。共産主義メンバーの中で“内ゲバ”が起きたのです。

 統一思想の唯一論(統一論)では、原因者である神が「性相と形状の二性性相の中和的主体」であるとし、被造世界は性相(精神)と形状(物質)に分立されて創造されたと考えます。性相と形状は原因者において一つなので、二元論ではなく一元論です。そのように捉えることで、唯心論を新しい次元に昇華させ、唯物論を吸収し、全人類を新しい世界に導くことができるのです。

男女の価値が平等であるという神学的根拠

 また、原相論では、原因者である神が「陽性と陰性の二性性相の中和的主体」と唱えます。神は「父なる神」であるとともに「母なる神」でもあるのです。つまり、「天の父母」であるということです。これが、「創造本然の男女の価値は平等である」という神学的根拠になります。

 男性と女性はお互いに神の半分の要素を持って生まれたので、両者が一つになってこそ完全なものとなります。男女一対一による結婚が本然的な関係です。最近は、生物学的には「性の連続性」(性は男女二つだけではなく、虹のようにたくさんあること)が定説のように言われ、LGBT(性的少数者)運動が正当化されていますが、その基本も男性性と女性性の二つであって、“多様”なのではありません。

 現代において、「多様性」という言葉はとても重要な意味を持ちます。異なる民族や文化、その多様性を尊重することはとても大切です。しかし、性は、男女二つのみなのです。

 歴史を振り返ると、男性を中心とした社会が築かれ、女性は搾取され、虐げられてきました。その反動から、ウーマンリブ(女性解放運動)やフェミニズム(女性解放思想)が広がってきました。韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁(真のお母様)の自叙伝には、次のように書かれています。

 「人間始祖の堕落によってこのような天の父母様の創造理想実現は延長され、『天の父母』の立場ではなく、神様の男性格である『天の父』の立場を中心とした、男性中心の歴史が展開されたのです。西洋文明の根幹を形づくったヘレニズムとヘブライズムも、みな総じて男性を中心とした歴史を綴(つづ)ってきました。したがって、神様の女性格である『天の母』の立場は隠され、神様は『天の父母様』になることができなかったのです。西洋社会で起こったフェミニスト運動が、男性による支配に対抗する単なる革命運動になってしまったのも、このような西洋における神様の存在論的な立場と関係があります」(『人類の涙をぬぐう平和の母』4ページ)

 本来、男女は相補的関係にあります。お互いに補い合い、支え合って一つになってこそ、神の完全な似姿になることができるのです。決して敵対関係ではありません。