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シリーズ中級講座 4
統一思想入門講座
「統一思想とは何か」<4>

 世界家庭誌で2021年11月号から2022年12月号までの期間に掲載された「中級講座シリーズ」の内容を、「シリーズ中級講座」のタイトルで毎日朝5時にお届けすることになりました。信仰生活の向上、毎日のみ言学習にお役立てください。

統一思想研究院
木南章良・首席研究員

(二)思想的立ち位置

右翼と左翼を利他主義によって一つにする

 統一思想のことを、表現を変えて「頭翼思想」と呼びます。「頭翼」という言葉は聞き慣れない言葉だと思いますが、「右翼」と「左翼」を高い次元で包容するという意味があります。

 右翼や左翼の語源は、フランス革命時代の議会で、議長席の右側に保守的な考え方の人が座り、左側に革新的な考え方の人が座っていたことにあるとされています。

 真のお父様は、その由来を霊的にさかのぼり、イエス・キリストが十字架に架けられたときの右の強盗と左の強盗にあると説明されました。

 左翼的な考えの中に共産主義思想があります。共産主義は神の存在を否定するのみならず、人間をただの物質と捉えます。“人を人と思わない”ところがあるのです。

 私たちは、新しい価値観による愛の精神をもって、右翼と左翼を一つにする使命を持っています。統一思想は、“左の思想”である共産主義から増悪心、闘争心、物質主義を、“右の思想”である民主主義・自由主義から利己主義、集団利己主義を取り除いて、「自分よりも他のために生きる」という利他主義によって一つにし、神と人類の宿願である理想世界を実現しようとするものです。

▲共産主義思想を体系化したカール・マルクス

 「『神主義』の本質は愛であり、その思想は、人の四肢五体を動かす頭に相当する中心思想です。それで『頭翼思想』というのです。

 右手も左手も、実は同じ体に付いているものです。頭がなければ、それらは互いに他人同士のように闘いますが、頭が中心に定着して入れば、右手も左手も共に頭の命令に従って、体全体のために働く一つの共同体になるのです」(同1212ページ)

(三)人間観と歴史観

善悪の矛盾を抱えた人間

 統一思想の人間観についてお話しします。

 本来、人間は神の子女として創造されましたが、現実には、父母なる神の理想から離れた、“故障した状態”にあると言えます。それは、人間始祖アダムとエバが堕落したからです。人間の本質が善なのか悪なのかということで、「性善説」、「性悪説」という考え方がありますが、統一思想はどちらの説の立場も取っています。「本来、善なる者が、堕落によって善悪が混沌とした者になった」としているのです。

 現実の人間は、本心では善の欲望を追求しながら、邪心のゆえに、我知らず悪の欲望を満たそうとしてしまいます。統一思想では、現実の人間をそのように矛盾した存在であると捉えています。

 アダム・スミス(英国の哲学者・倫理学者・経済学者、17231790)は、人間が利己心に基づいて自己利益を追求することを前提にした経済学を唱えました。しかし、人間には利己心もあれば利他心もあり、必ずしも利益を求めて合理的に行動するわけではありません。最近、経済モデルに人間の心理を組み込んだ「行動経済学」が注目されてきています。

神と人間による復帰摂理歴史

 次は歴史観です。三つの観点から説明します。

①父母なる神が、子女なる人間を本来の理想世界に導く摂理歴史
 アダムとエバが人類の父母として子女を生み育て、人類は繁栄していかなければなりませんでした。しかし、堕落して偽りの父母になったがゆえに、人類の罪悪史が出発しました。そのため、神の摂理歴史は、本然の人間と世界を取り戻すための再創造の歴史になったのです。

②神の95パーセントと人間の5パーセントの責任分担
 神の摂理歴史というと、神が決めたとおりに歴史は流れ、人間は何の影響も及ぼすことができないと考える方もいるのではないでしょうか。統一思想では、神が95パーセント、人間が5パーセントの責任を果たし、両者が合わさることを通して歴史が進んでいくと捉えます。神による“決定論”ではなく、人間自身が歴史を開拓していく部分があると見るのです。

③善悪闘争史
 共産主義の歴史観を「唯物史観」といいます。そこでは、人類歴史は「階級闘争の歴史」と想定します。一方、統一思想では、悪の側を善の側に取り戻す「復帰歴史」と見ています。