2023.08.05 12:00
神様はいつも見ている 16
~小説・K氏の心霊体験記~
徳永 誠
小説・K氏の心霊体験記「神様はいつも見ている」を毎週土曜日配信(予定)でお届けします。
世界平和統一家庭連合の教会員、K氏の心霊体験を小説化したものです。一部事実に基づいていますが、フィクションとしてお楽しみください。同小説は、主人公K氏の一人称で描かれています。
第2部 姉が統一教会へ
3. 聖姫大神の言葉か、姉の言葉か
「大神さん(ここでは「須佐之男命/スサノオノミコト」のこと)は、そんなことは言ってないと思うよ」という聖姫大神(ひじりひめおおがみ)の言葉を聞いて、私は鬼の首を取ったように小躍りした。
やはりそうだ。姉はうそをついている。スサノオの大神はそんなことは言っていないのだ。スサノオの大神自身の言葉ではないけれど、大神の眷属(けんぞく)で腹心ともいうべき聖姫大神が言うのだから間違いないはずだ。
その時の私は、聖姫大神が言った内容をよく吟味していなかった。
「言ってないと思うよ」の「思うよ」という曖昧な部分をすっ飛ばして「言ってない」と思い込んだのだ。
冷静に考えていれば、聖姫大神はスサノオの大神の言葉ではなく、自分の推測を述べていることに気付いたかもしれない。
だがこの時の私は、姉が神道の信仰をやめて、統一教会(現・家庭連合)に宗旨替えするということに激怒していたので、そう思いたかったのだ。
私たちの言うことを全く聞こうとしない姉だったが、聖姫大神から直接言ってもらえば、姉の心も変わるはずだと私は考え、姉を呼びにいくことにした。
すでに夜中の零時を過ぎていた。
私は母に入っている聖姫大神に、「そのまま、いてくださいね。今、姉を起こしてきますから」と頼んだ。
姉は聖姫大神の言葉を聞いて、「聖姫さんは知らないと思う。大神さんしか知らないことだよ」と言った。
私には姉の言葉はその場限りの言い訳としか思えなかった。うそを重ねていると思った。
なぜなら、聖姫大神は私たち姉弟を幼い頃から守り、育ててくれた大恩ある神様である。私が聖姫大神と姉のどちらの言葉を信じるかといえば、当然、聖姫大神だった。そんな大恩のある神様を裏切ってまで、他の宗教へ行こうとする姉の気持ちが全く理解できなかった。
「姉ちゃんの言っていることは全く理解できない。狂ってる」
「どこが狂ってるというの? スサノオの大神さんがそうおっしゃったのよ」
「大神さんがそんなことを言うはずがないやろ! 事実、聖姫大神さんは言っていないと言ってるやろ!」
「だから、聖姫大神さんは知らないのよ。スサノオの大神さんから私が直接言われたんだから」
「そんなこと信じられない!」
「信じられないなら、それでもいいわ。私は大神さんの言うとおりにさせてもらいますからね!」
私たち家族全員の反対にもかかわらず、姉は統一教会へ通うことをやめなかった。
私は姉を罵(ののし)った。神様への恩を忘れた姉を裏切り者と断罪した。
「二度と姉ちゃんの顔は見たくない!」
私は怒りのあまり、そんな捨てぜりふも吐いた。
統一教会の信仰を持った姉は、当初、親戚中から猛反対を受けた。統一教会に通えないようにと、叔父の家に軟禁されたこともあった。しかし姉の信念は変わらなかった。家に閉じ込められても、姉はトイレからこっそりと逃げ出したのだ。
(続)
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次回は、「神棚の中の『原理講論』」をお届けします。