2023.07.30 22:00
ダーウィニズムを超えて 17
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生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。
統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著
第一章 進化論を超えて
―新創造論の提唱―
(十一)進化論と創造論を共に生かす統一思想
統一思想から見て、進化論はすべて間違いというのではない。現象的に、結果的に見るとき、生物は進化するように見えるのであって、進化論が登場したのは、ある面では当然のことであった。実際、進化論が主張している進化のプロセスは認めるべきである。ところが進化論は、宇宙線、紫外線、雷などの無秩序な力によって、ランダムな突然変異が起きて、その中から有益なものを自然が選択することによって進化したという。それが問題である。ランダムな突然変異ではなくて、創造的な力が及んで遺伝子を組み換えながら、生物は低次なものから次第に高次なものへと、段階的に創造されたと見るべきである。そのとき、創造的な力は、宇宙線、紫外線などを用いて、さらには遺伝子を操作するためのウイルス、プラスミド、ファージなどのベクターを用いて作用したと見ればよい。彗星などで遺伝子のかけらやアミノ酸などがかたちづくられて、それが地球に降り注いで、さらに地球上でDNAやたんぱく質が合成されたと見ることもできよう。そのように見ることによって、統一思想の新創造論は進化論の誤りを正しながら、進化論を包容していくことができるのである。
他方、キリスト教の創造論は、全知全能の神が、あたかも魔法使いのように、6000年前に6日間であっという間に宇宙と生物を創造したという。しかし、その数字は象徴的なものである。実際は、時間をかけながら、構想に従って、力(エネルギー)を投入しながら創造されたというように、補って考えれば、そして創造の目的、人間と万物の関係を明らかにすれば、キリスト教の創造論も科学時代の今日に蘇生(そせい)することができよう。つまり魔法使いのような神としてではなく、最高の科学者、最高の芸術家としての神として捉え直すのである。
ここで、聖書に書かれた6日間の創造の記録を現代科学の立場から解釈し直して、神の創造の過程を見てみよう。
①第一日──「光」による宇宙の創造
第一日に神が「光あれ」と言われると「光があった」と聖書は記録している。これは現代科学の立場から見れば、インフレーションとビッグバンによって、宇宙が形成されたことに相当する。
138億年前に起きたビッグバンにより、放射線(電磁波)が広がっていき、その中で水素とヘリウムの原子が生まれた。やがて放射線と原子からなるガスは急速に冷えていった。そして、あちこちで小さなガスだまりができた。そして巻きひげのような、薄いガスの巨大な雲がいくつもできた。それはゆっくりと回転していたが、その中に数千億もの光る点が現れた。そして、たくさん生じた巨大な回転するガスの雲は、やがて銀河の群れに発展していった。宇宙の創造であった。
②第二日──「水」の惑星の誕生
聖書によれば、第二日に「おおぞらの下の水とおおぞらの上の水とを分けられた」と記録されている。これは現代科学の立場から見ると、46億年前の生まれたばかりの原始地球の状態に相当する。地球は高温の水蒸気を主とする大気(上の水)に覆われていたが、やがて大気は冷えて豪雨となって地表に降り注ぎ、海(下の水)をつくったのである。水の惑星である地球の誕生であった。
③第三日──海と陸(「土」)の形成
聖書によれば、第三日に「海と陸が造られた」とされている。現代科学によれば、地球が水で覆われ、一面の海となってから間もなく、陸の芯のようなものが現れ始め、やがて大陸が形成されたと考えられている。海の中から陸(土)が盛り上がってきたのである。陸がいつ、いかにして形成されたのか、まだ明らかにされていないが、35億年前から大陸は形成されたという。
約40億年前、海の中で最初の生命であるバクテリアが生まれた。そして約35億年前には、らん藻類が生まれて、光合成反応により酸素をつくり出した。大気中には二酸化炭素が充満していたが、海に溶けた二酸化炭素は炭酸カルシウムとなって沈殿、堆積し、石灰岩となった。石灰岩は海洋プレートの沈み込みとともに、大陸の中に取り込まれていった。そうして大気中の二酸化炭素はしだいに減少し、大気はやがて窒素が主成分となった。
④第四日──酸素のある「空気」の形成
聖書によれば、第四日に、「大きな光(太陽)と小さな光(月)と星が造られた」とされている。しかし実際には、この時、すでに太陽と月と星は存在していた。したがって、これは地球を取り巻く大気が晴れ渡り、地球上から見て、太陽と月と星がくっきりと見えるようになったと理解すべきである。
らん藻類の光合成によって海の中で発生した酸素は、海の中で鉄イオンを酸化させて酸化鉄を沈殿、堆積させた。それが今日の鉄鉱石となった。今から約20億年前、酸化鉄の沈殿は終わり、酸素は大気中に放出されるようになった。
地球の大気は、初めは灰色っぽい厚い霧状の層であったが、酸素の蓄積によってゆっくり変化し始め、空がだんだん青くなり始めた。青い空は光合成生物の繁殖によって、まず海が、そして後に陸上が緑化した結果、もたらされたものであった。地球は約20億年前から、ゆっくりと青くなっていき、「青い惑星」になったのである。
約6億年前、海の中は、バクテリアや藻類よりはるかに高級な多細胞生物が住める環境になった。そして約5億4000万年前には、「カンブリア紀の爆発」と呼ばれる海洋無脊椎動物の大量の出現を迎えた。
サンゴをはじめとする石灰質の殻をつくる生物が海の中に溶けた二酸化炭素を石に変えていき、空気中の二酸化炭素をさらに減少させた。そして大気中の二酸化炭素は、いつしか0.03パーセントという現在の状態にまで減少した。陸上にも低級な生物が出現していたが、その中で、ミミズがせっせと土を柔らかい肥沃な土壌に変えていた。
こうして約4億年前、高級な生物が地上に住むことのできる環境が準備されたのである。その時、大気中の酸素の濃度は現在と同じ21パーセントになっていた。こうして、われわれが住むのに適した光と水と土と空気のある地球ができ上がったのである。
⑤第五日──大森林と恐竜の時代
聖書によれば、第五日には「水の生物(魚)と空の鳥」を造られたとされている。現代科学によれば、この時代は、植物としてはシダ植物と裸子植物が繁茂し、海には魚類、陸には両生類と爬虫類が繁殖した。
約4億年前、古生代のデボン紀には海の中で魚が大量に繁殖し、魚類時代と呼ばれた。植物ではコケ類から始まって、シダ植物の時代を迎えた。シダ植物はまず草木の形で繁殖し、だんだん大型の木となり、やがて石炭期の巨大な大森林をつくった。しかし、それは花もなければ、虫も鳥もいない、まさに沈黙の世界であった。
やがて中生代に至り、裸子植物(針葉樹)が繁栄した。樹木は花をつけるようになったが、まだ花びらはなく、花粉を空中にまき散らしていた。地上では、両生類に続いて、爬虫類が繁殖し、巨大な爬虫類である恐竜の時代を迎えた。やがて空には鳥が飛ぶようになった。
この時代は、神の創造において、まだ環境づくりの時代であった。すなわち人間を中心とした、哺乳類と被子植物(顕花植物)の世界、愛と美の世界をつくるための前段階の時代であった。そのために、巨大なシダ植物の大森林も、巨大な爬虫類の恐竜も、環境づくりを終えると消えていった。中生代の裸子植物の多くも消えていった。次の新生代の被子植物と哺乳類、そして人間に舞台を譲ったのである。
⑥第六日──創造目的の完成の時
聖書によれば、第六日に「家畜と這うものと獣、そして最後に人間が造られた」とされている。約6500万年前、新生代を迎えた。植物においては被子植物の時代となり、動物においては哺乳類の時代となった。藻類、コケ類、シダ植物、裸子植物は、それぞれ今でも生存しているが、わき役となった。また動物において、無脊椎動物、魚類、両生類、爬虫類、鳥類などが、やはりわき役となった。
最後に人間始祖のアダムとエバが誕生して、人間を中心とする世界ができた。それは神の愛の理想が完成する世界であった。動物において、雄と雌が愛のドラマを展開し、植物において、雄しべと雌しべが授受しながら愛の花を咲かせ、美の世界を展開した。そして万物のつくる愛の環境の中で、アダムとエバが愛の主人公として、最高の愛を実現するようになっていたのである。聖書による6日間の天地創造の記述と、現代科学の立場から見た創造の過程を図にまとめると、図1-6のようになる。
以上のような創造の過程を見るとき、神は一瞬のうちに、魔法の杖を振るようにして、宇宙をつくり、海と陸、空気をつくられたのではないことがわかる。長い時間をかけながら、計画的に、科学的に、人間と生物が生存しうる環境(地球)を造られたのであり、やはり時間をかけながら、低級なものから高級なものへと、段階的に、生物を創造し、最後に人間を造られたのである。
進化論と創造論の論争は、今もなお、互いにすれ違ったまま、激しく行われている。しかし、このままでは両者の主張は平行線をたどるばかりである。統一思想の新創造論は、この論争を収拾しうるものである。
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次回は、「進化論を超えて─新たな展望」をお届けします。