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勝共思想入門 48

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「勝共思想入門」を毎週木曜日配信(予定)でお届けします。
 同書は、40日研修教材シリーズの一つとして、1990年に発行されました。(一部、編集部が加筆・修正)

光言社・刊

第十二章 マルクスの根本矛盾とその克服 -総括として-

二 真の解決の道

(二)結論
 以上のことから、人間の最も本質的性質は、すべてのものを対象化しようとするところに見いだされるといえるでしょう。これを自己実現の衝動とも表現することができます。

 このような、すべてのものを自己の対象として関係を結ぼうとする衝動の現れが、人間の内的な世界から発して現れるとき、「愛」となります。また、その愛が外的な世界に現れるとき、生産活動、労働となるのです。だから、より主体的、根本的立場に立つのは愛なのです。

 人間にとって一番大切なもの、最も本質的なものは何かが分かるのは、病気か何かで、あと何日かで死ぬということが分かったときといえるのです。その時人間は何を求めるでしょう。権力でしょうか、財産でしょうか、知識でしょうか、そうではないのです。その人が求めるのは愛と信頼なのです。知人に、心を通い合わせた人々にもう一度会いたくなるのです。そして、愛と信頼を確認したくなるのです。自己実現の欲求の中で最も大きなものは愛なのです。

 自分自身をも対象化し、真の関係を結ぼうとする衝動をもつものが人間ですが、その衝動とはどのように表現したらよいのでしょうか。人間の本質は感性でも、理性でも、労働でもなく、もっと根本的なものが、つまり「自己実現の衝動」であるのです。それを「心情」といいます。

 フォイエルバッハが感性と同じ意味で用いた心情とは違います。心情は「愛を通じて喜びを得ようとする情的衝動」と定義されます。喜びたいという抑え難い情的力なのです。喜びには対象から来る刺激が不可欠です。喜びは対象により、それとのかかわり合いにより生ずるものなのです。

 人間の心情をその本質としてとらえ、そこから人間らしさを、そしてその喪失を、つまり人間の疎外を、その社会をもう一度問う必要があることを、疎外の克服を願うマルクス主義者に訴えたいのです。人間の本質をとらえるとらえ方が間違っていたために、今日の共産主義社会の悲劇があるのです。もう一度、原点からやり直さねばならないのです。

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 「勝共思想入門」は、今回が最終回です。ご愛読ありがとうございました。

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