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中和新聞セレクト Vol.4
混迷する現代社会Ⅱ

 毎週2回(火、金)、さまざまなコンテンツを配信している『中和新聞』。Blessed Life編集部が同記事のアーカイブスからおすすめのコンテンツをセレクトして皆さまに紹介します!
  第4弾は「混迷する現代社会Ⅱ」(21世紀の家族を考える会)のシリーズを毎週水曜日(予定)にお届けします。

 同コンテンツは『中和新聞』2020年5月から連載中のシリーズです。

第18回「孤独」について考える

(中和新聞 2023年120日 通巻1530号より)

 このシリーズでは、現代社会が抱えるさまざまな問題点を分析し、社会や家庭における正しい観点(価値観)や方向性を提示します。今回は「孤独」について考えます。

■増加する一人暮らしの高齢者と結婚しない若者
 『世界一孤独な日本のオジサン』(岡本純子著 2018年・角川新書)、『孤独は社会問題孤独対策先進国イギリスの取り組み』(多賀幹子著 2021年・光文社新書)など、近年「孤独」に関する書籍が多数出版されています。長引くコロナ禍により、世界的にも孤独が社会問題として認識されつつあります。

 英国では20181月、世界に先駆けて「孤独担当大臣」を置いたことが大きな話題となりました。英国に次いで日本でも20212月、「孤独・孤立対策担当大臣」(現在は小倉將信氏)が誕生しました。内閣官房に設置された孤独・孤立対策担当室では、昨年7月と8月に相談ダイヤルをそれぞれ1週間ずつ設置。「着信はいずれも1万件を超えた」といいます(「産経新聞」20221218日付)。「7月の相談者の8割が中高年と見られ、この世代への孤立対策の重要性が浮き彫りになった」(同)というのです。

 2020年の国勢調査によると、単身世帯は2115万世帯で、一般世帯の38%を占めます。このうち65歳以上の単身世帯は671万世帯(単身世帯の約32%)と、今後高齢者の一人暮らしがさらに増えていくと見られます。

 一方、20229月に国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が公表した「第16回出生動向基本調査」の独身者調査(1834歳の未婚者を対象)では、「一生結婚するつもりはない」と回答したのが、男性17.3%、女性14.6%2015年の前回調査(男性12.0%、女性8.0%)より5ポイント以上も伸びたのです。

 また、社人研が昨年公表した最新の調査では、50歳までに一度も結婚したことがない人の割合(2020年の全国平均)は、男性28.25%、女性17.81%と、10年前(男性20.14%、女性10.61%)、20年前(男性12.57%、女性5.82%)と比較して大幅に伸びていることが分かります。

■孤独・孤立がはらむ、さまざまなリスク
 聖書には「人がひとりでいるのは良くない」(創世記218)と、神様が、男性の相対として女性を創造されたことが明記されています。現在、増え続けている「人がひとりでいる」状態には、どのような問題があるのでしょうか。

 孤独・孤立は、自殺や引きこもり、貧困をはじめ、さまざまなリスクをはらんでいます。

 孤独を「世界的な危機」と位置づけ、各地の対策を紹介する、英国ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン名誉教授のノリーナ・ハーツ氏は、その深刻な悪影響を次のように証言しています。「孤独は心の健康だけでなく、体の健康にも影響を与えます。心臓病やがん、認知症のリスクを増大させ、1日に15本のたばこを吸うのと同様の害があると言われており、公衆衛生の面で社会に多額の経済的負担を生じさせます」(「朝日新聞GLOBE2021125日付)。孤独によって英国内に及ぼす損失が、「48000億円」に達するとの試算もあるほどです。

 孤独・孤立は私たちの心身を蝕(むしば)むだけでなく、近年、社会を震撼させている無差別殺傷事件とも無関係ではありません。失うものが何もなく、躊躇せず凶悪犯罪に及ぶ者のことを「無敵の人」、孤独・孤立の末、殺人を行った後、あるいは同時に自殺をする行為を「拡大自殺」と呼ぶことがあります。20086月に起こった秋葉原無差別殺傷事件(7人が死亡、10人が負傷)や、202112月の大阪・北新地ビル放火殺人事件(27人が死亡)などのニュースは、私たちの脳裏に焼きついています。

 法務省法務総合研究所が2013年に実施した調査では、無差別殺傷犯52人のうち33人が、犯行時に周囲との交友がない、または希薄だったことが明らかになっています。同研究所は、「何らかの集団への所属関係があれば無差別殺傷事件に結びつきにくい。社会的な孤立を避けるための方策は有用である」と提言しています。日本福祉大学の斉藤雅茂教授(社会福祉学)も、「無敵の人は、いわば社会からはじかれた人たちだ。彼らに救いの手を差し伸べず放置することは社会にとってリスクになる。その意味でも、孤立や孤独は重要な問題だ」と訴えています。

■孤独な人々を前に家庭連合ができること
 現代社会が孤独を深めている原因について、作家の橘玲氏は「現代社会がますます『リベラル化』しているからだ」と指摘しています(『週刊文春』2022721日号)。「自分らしく生きる」という価値観とも言える「リベラル」化が進むことで、必然的に人々はばらばらになっていくというのです。日本大学の先崎彰容教授(近代日本思想史)も、「現代は『個』が『孤』となり、砂粒のようにバラバラにされている社会です。にもかかわらず、さらに個人主義を強調しても、『個=孤』になれと煽動しているようなもの」と、リベラル派を鋭く批判しています(『週刊新潮』20231512日号)。

 このような現代社会にあって、各自治体では、孤独・孤立に特化した対策はいまだ手探りの段階だといいます。

 では、私たち家庭連合には何ができるのでしょうか。一人一人が日常的に実践できることは多くあります。『平和経』には、「どのような存在も、独りで孤立していては、愛を感じることができないのです」(476ページ)とあります。孤立した人々に対し、一緒に食事をしようと誘う、対面で相手の話に真摯に耳を傾ける、つながりを感じられる居場所を提供する等々、愛を実践することです。孤独を深める現代社会だからこそ、家庭連合の存在意義が、より問われていくのです。

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 次回は、「カトリック教会での性的虐待」をお届けします。

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