中和新聞セレクト Vol.4
混迷する現代社会Ⅱ

 毎週2回(火、金)、さまざまなコンテンツを配信している『中和新聞』。Blessed Life編集部が同記事のアーカイブスからおすすめのコンテンツをセレクトして皆さまに紹介します!
  第4弾は「混迷する現代社会Ⅱ」(21世紀の家族を考える会)のシリーズを毎週水曜日(予定)にお届けします。

 同コンテンツは『中和新聞』2020年5月から連載中のシリーズです。

第17回「性感染症と少子化」について考える

(中和新聞 2022年11月18日 通巻1514号より)

 このシリーズでは、現代社会が抱えるさまざまな問題点を分析し、社会や家庭における正しい観点(価値観)や方向性を提示します。今回は「性感染症と少子化」について考えます。

■「梅毒」感染者が初の1万人超え
 性感染症「梅毒」の感染者が、今年(2022年)1141人(20221023日時点の速報値)になったと、国立感染症研究所が発表しました(2022111日)。感染者が1万人を超えたのは、現在の統計方法となった1999年以降で初めてとのこと。

 都道府県別では、東京都が最多の2880人(28%)、大阪府が1366人(13%)、愛知県が573人(6%)と、都市部での感染が多いことが分かります。さらに、「(2022年)102日までに報告のあった感染者9311人の分析では、男性66%、女性34%20代が最も多く35%3022%4020%」(朝日新聞202211月2日付朝刊)でした。

 梅毒は、性交だけでなくキスでもうつり、感染の有無は血液検査で調べられますが、症状で見分けるのは難しいとされます。

 その他、日本で多い性感染症にはクラミジア感染症や淋病などがあり、いずれも増加傾向にあります。

■少子化と「性病」の深い関係
 月刊総合情報誌『選択』202211月号には、「少子化と『性病』の深い関係 国が放置する『不妊増加』の要因」と題する、ひと際目を引く記事が掲載されました。

 そこでは、「近年、我が国では、クラミジア感染症が増加している」と、国立感染症研究所の報告数を例示しています。また千葉県の医師らの調査によると、「クラミジア感染の既往がある人は、そうでない人と比べて、卵管障害が起こるリスクが3割高まる」といいます。

 「不妊の原因」にはさまざまな要因が挙げられますが、「その約3割は卵管異常によるもの」で、「このうちの3割はクラミジア感染症による」(月花瑶子医師・杉山産婦人科)と考えられているため、「不妊の1割がクラミジア感染によるもの」(『選択』編集部)と指摘しています。

 記事には日本同様、梅毒や淋病が増加している米国の現状も紹介されています。米国疾病予防管理センターの研究チームが20211月、「米国人の5人に1人は何らかの性感染症に罹患している」という研究結果を学術誌に報告。その増加理由について多くの研究者は、「SNSや出会い系アプリが普及し、男女の出会いのハードルが下がったため」と推測しています。

 実際に、日本の国立社会保障・人口問題研究所が20229月に公表した「第16回出生動向基本調査」(結婚と出産に関する全国調査、以下「第16回調査」)によると、SNSやマッチングアプリなどのインターネットサービスで「異性の交際相手と知り合った」と答えた男性は11.9%、女性は17.9%に上ります。正に「恋人または婚約者のいる未婚男女の10人に1人以上が、インターネットを使ったサービスを介して交際相手と知り合っている」のです。

 さらに、一般社団法人「日本家族計画協会」が20202月に実施した調査(有効回答数5029人)の結果も驚くべきものです。「現在、パートナー(恋人や結婚相手)以外の人とセックスしていますか」と、性交経験のある回答者(満20歳~69歳)に聞いたところ、「している」と回答したのは、男性41.1%、女性31.4%だったのです。世代別では、20代男性が54.6%30代男性が52.1%。女性も20代が45.2%30代が42.0%と、男女とも非常に高い割合であることが分かります。

 『選択』の記事では、クラミジアなど性感染症の対策の難しさに、「夫婦やパートナーをまとめて治療しなければ、再感染は避けられない」という点を挙げています。しかし、夫婦やカップルの検査は「プライバシーに関わる」ものであり、2人のうちどちらか、または双方が浮気・不倫をしていれば、感染対策も容易ではないというわけなのです。

■少子化と「性病」の深い関係
 若者を中心に性感染症が拡大傾向にある一方で、前述の第16回調査では、少子化をさらに促進しかねない実態が明らかにされています。18歳から34歳までの未婚男女において、異性の交際相手を全く持たない男性が72.2%、女性が64.2%。さらに「未婚男女の3人に1人は異性との交際を望んでいない」というのです(男性33.5%、女性34.1%)。ちなみに性交経験のない割合は、男性47.0%、女性52.5%となっています。

 未婚の男性では、7割以上が交際相手を持たず、3割以上が交際を望んでいないということですが、決して性欲がないというわけではありません。日本家族計画協会の調査では、20代男性で69.9%30代男性で77.6%と、7割から8割弱の男性が性行為を望んでいることが分かります。

 そして、より問題なのは、第16回調査で「結婚したら子どもをもつべき」との考えに対する未婚男女の支持が、前回調査の2015年から著しく減っていることです。男性では75.4%から55.0%20.4ポイント減)、女性では67.4%から36.6%30.8ポイント減)。男女ともの滑落は、今後の少子化を考えるうえでも深刻な課題だと言えるでしょう。

 2020年の国勢調査では、単身世帯が世帯人員別で最も多い2115万世帯と、全体の38%を占めています。第16回調査の結果なども踏まえ、経営コンサルタントの大前研一氏は、「今の日本は『ソロ社会』化が加速している」と指摘しています(『週刊ポスト』20221111日号)。

 性感染症の拡大と「ソロ社会」化──。どちらに転んでも少子化にさらに拍車がかかる現状です。政府のみならず、私たちにも何ができるのか、深刻な問いが突きつけられていると言えるでしょう。

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 次回は、「『孤独』について考える」をお届けします。

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