2023.06.23 22:00
【テキスト版】
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第142回 宗教において洗脳やマインド・コントロールはありますか?
ナビゲーター:阿部美樹
皆さん、こんにちは!
今回は、「宗教において洗脳やマインド・コントロールはありますか?」という質問に対してお答えします。
宗教や信仰に対して、「洗脳」や「マインド・コントロール」という言葉を使って批判する人がいます。しかしその言葉の意味や根拠を理解せずに使っている場合が多いようです。
まず「洗脳」とは何でしょうか。
洗脳とは、もともとは共産主義者による思想改造のことです。朝鮮戦争の捕虜収容所で行われた思想改造がCIA(米国の中央情報局)の報告書で明らかになりました。
そしてジャーナリストのエドワード・ハンターが中国共産党の洗脳テクニックを紹介したことで、広く知られるようになりました。
共産主義者による「洗脳」は、物理的な監禁や拷問、薬物や電気ショックなどを含めた強制的な方法で人の信念体系を変えさせる手法です。
共産主義者たちは、宗教人をはじめ、反対する人を強制収容所に入れて、恐喝・脅迫・暴力などで従わせようとし、挙げ句の果ては1億5千万人以上の人を殺害しました。
果たしてこのような「洗脳」が宗教における信仰生活の中で行われているのでしょうか。
不法行為に当たるほどの暴力や強い精神的圧力といった強制的手法を用いない限り、宗教における洗脳はあり得ないと言えます。
また、洗脳の研究報告によると、「洗脳は一時的な行動上の服従しかもたらさなかった」「強制的な手法を用いても人の心を永続的に変えさせることは難しい」と結論を出しています。
そこで宗教を攻撃するために新たな概念が必要になり、それで出てきたのが、いわゆる「マインド・コントロール」なる用語です。
マインド・コントロールとは、身体的な拘束や拷問、薬物などを用いず、日常的な説得技術の積み重ねにより、本人に自分がコントロールされていることを気付かせることなく影響力を発揮して個人の信念を変革させてしまうことだといいます。
もしこれが本当なら「洗脳」よりもはるかに洗練された手法だとも言えます。
しかし「マインド・コントロール」と言っても、科学的に定義された概念ではありません。心理学においても、法律においても確立している用語ではありません。
同一の行為がその国の政治状況、法規制、社会規範の違いによって全く異なった評価を受けるのですから、「マインド・コントロール」という概念にはそもそも普遍性はなく、政治的概念に過ぎません。
もはや具体的に何を指しているのか分からず、混乱を招くだけです。
例えば、「行為」や「影響力」という言葉は、価値中立的な言葉ですが、「マインド・コントロール」なる用語にはネガティブなニュアンスが込められています。
ですから「マインド・コントロール」という用語は、合法的な行為を不法行為や犯罪と結び付けて非難するような偏見を助長する危険性がある言葉なのです。
「マインド・コントロール」は、流行語や俗語のレベルの言葉であって、あまりにも多義的過ぎて、その言葉をそのまま使って法律を作ることは不可能です。
このように、「洗脳」や「マインド・コントロール」という言葉自体が、宗教や信仰生活を否定するような表現なので、適切な言葉ではありません。