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コラム・週刊Blessed Life 269
世界秩序が暴力的に破壊されていく!

新海 一朗

 現在、世界は混沌(こんとん)たる状態に置かれています。
 世界の混沌とは、すなわち日本と世界が大変な状況、巨大な変化、内外の危機に取り囲まれている状況を指します。しかしそれらは決して偶発的に起きているのではなく、世界の秩序を破壊する勢力によってもたらされているものです。

 残念なことに、「国際の平和と安全を維持する」とうたう国際連合の機能がまひし、もはや国際連合に平和と安全の維持を期待できないところまで、国連は無力なものになってしまったということです。
 ロシアのプーチンによるウクライナ侵攻に対して、国連はなすすべがありませんでした。

 ロシアは国連安保理の常任理事国(米国、英国、フランス、中国、ロシアの5カ国)の一員でありながら、平然と戦争を引き起こしました。
 しかも、安保理会合が開催されている最中にロシアが軍事侵攻に踏み切ったことは、国連に対する侮辱であり、いかに国連を無視しているかを示しています。

 一方、国連そのものもロシアの蛮行を引き留めることができなかったという事実は、国連安保理が完全に機能不全に陥っているということを示しています。
 現在、世界の秩序破壊が進んでいる背景には、こういった国連の無力化(左翼勢力の跋扈〈ばっこ〉)があらわになってきているということです。

 もう一つは、「ブダペスト覚書」の存在が挙げられます。
 「ブダペスト覚書」とは、1994125日にハンガリーの首都ブダペストで開催されたOSCE(欧州安全保障協力機構)会議で米国・英国・ロシアの核保有3カ国が署名した覚書のことをいいます。
 ウクライナ・ベラルーシ・カザフスタンが核不拡散条約に加盟したことに関連して、協定署名国(つまり米国・英国・ロシア)がこの3カ国の安全を保障する、という内容です。

 しかし、米国も英国もロシアもウクライナ戦争を抑止する能力を持たず、ウクライナの安全を保障することはありませんでした。
 これらの3カ国は「ブダペスト覚書」を忘れ去ったのでしょうか。ブダペスト覚書には、ウクライナの領土保全や政治的独立に対する脅威、または他国からの武力行使に対する安全保障が含まれていました。その結果、1994年から1996年の間にウクライナ・カザフスタン・ベラルーシの3カ国はブダペスト覚書を信じて、核兵器を放棄(正確にはロシアに移転)しました。

 ロシアは2014年にクリミア半島を一方的に併合し、2022224日にはウクライナに侵攻しました。
 米英はこの二つの事実をブダペスト覚書への違反行為であり、ウクライナの主権と領土保全を侵害していると批判しますが、それを全く無視しているのがロシアなのです。

 ウクライナは核兵器放棄の見返りに、ウクライナの安全保障がロシア、英国、米国から与えられると信じましたが、ウクライナはブダペスト覚書に裏切られた格好です。

 国連の無力化、そしてブダペスト覚書の不履行といった国際的な取り決めが効力を発しない無法の時代になりました。核抑止力さえ危うい最終戦争の時代(ロシアはベラルーシへ核兵器を運び入れている)になっているのです。

 今私たちが見ているのは、世界の秩序が暴力的に破壊されていくハルマゲドン的な光景です。
 現在の国際社会には悪魔的な暗雲が立ち込めていると言わざるを得ません。