家族の絆づくり 272
無意識に安心・安全を求める

ナビゲーター:阿部 美樹

やりたいのにやれない理由
 「やるべきなのに、なかなかできない」「やめたいのに、なかなかやめられない」ということはありませんか。

 思考が行動を決定していると言いますが、意識しても考えても行動が伴わないことがあります。その原因は何でしょうか。

 それは、無意識に安心・安全を求める性質を持っているからです。
 人は誰もが、良かれと思っても、その行動にリスクがあると不安や危険を感じてしまい、その行動を躊躇(ちゅうちょ)します。

 要するに、意識的には「やりたい」「できたらうれしい」と思っても、無意識的に「できなかったらどうしよう」「うまくいかなければ大変だ」という不安や危険を感じてしまい、その感情に支配されます。
 人間は「顕在意識」よりも、「潜在意識」から大きな影響を受けるからです。

風通しの良い空気感
 例えば、会議の場で反対意見を述べたいのに伝えられない場合があります。
 これは、「反対意見を述べたい」という願望と共に、「参加者から攻撃されるかもしれない、ネガティブな人に見られるかもしれないという不安」「反対することで左遷や降格があるかもしれないという危険」を感じるからです。

 このような意識状態の故に、多くの人が現状維持を選択するようになるのです。現状維持が望みでなくても、不安になること、危険なことを回避することの方が優先されます。
 人は何もしていなくても、そのようなことを思い巡らしながら何もしないことを選択しているのです。

 このような観点から見ても、「心理的な安全性」を確保することは大切なことです。
 そのためには、「受け入れる文化」「肯定する文化」が必要です。相手の発言や存在を受け入れること、自分の個性や存在を受け入れることです。

 また、失敗を成長として受け入れること、うまくいかないことを経験として受け入れることで、現状維持よりも前向きな挑戦をするようになることでしょう。
 職場においても、家庭においても、風通しの良い空気感をつくりだすことが大切なのです。