2023.04.25 12:00
平和の大道 30
国際ハイウェイ建設事業団
皆さんは、『平和の大道』という書籍をご存じでしょうか。著者は、一般財団法人国際ハイウェイ財団の理事長、佐藤博文氏です。
同書は、国際ハイウェイ財団が推進する「国際ハイウェイ・日韓トンネル」プロジェクトの意義や背景などについて総合的に理解することのできる貴重な一冊です。
Blessed Lifeではその一部を抜粋して紹介してまいります。ぜひお楽しみに!
佐藤 博文・著
日韓トンネル研究会の態勢整備に並行して、「国際ハイウェイ建設事業団」は、現地での調査態勢を整えた。
1983年に、唐津事務所を設置し、現地法人として「極東開発株式会社」を設立し、青函トンネルのボーリング号令(ボーリングチームのトップ)だった花田順一氏を雇用し、陸上ボーリングを開始した。
花田氏は青函トンネル工事で水平ボーリングを2000m掘った世界記録を持っている。85年には、青函トンネル号令だった佐藤謹一氏が合流し、86年から調査斜坑を掘り始めた。花田氏も佐藤氏も青函トンネルの名物技術者である。
さらに、国際ハイウェイ建設事業団の「壱岐事務所」、「対馬事務所」を設け、必要な人材を現地で雇用した。ボーリング調査は極東開発(株)と一成綜合建設(株)が行った。東松浦半島で8本、壱岐で8本、対馬で8本である。さらに、海洋調査のために調査船を購入した。「第一定安丸」(52t)、「第二定安丸」(10t)、「第三定安丸」(160t)がそれで、いずれも極東開発(株)で購入した。調査船は延べ4万km、地球一周分の距離を走るきつい作業であった。
海洋調査のピークは海洋ボーリングで、東海サルページが行った。対馬海峡は潮流が激しく、ボーリング用に打ち込む鉄パイプが曲がってしまうのだ。物理検層ができなくて非常に苦しい思いをした。地質調査の最大の難関であった。
調査斜坑の掘削開始
1986年10月、調査斜坑の掘削が鎮西町で始まった。工事を請け負ったのは熊谷組と三井建設のジョイントベンチャーで、兼重修・熊本大学名誉教授が指導した。総監督は青函のトンネル号令だった佐藤氏である。調査斜坑の掘削が地質調査のピークであった。
空からの調査に並行して、工事用地の買収交渉を進めた。唐津、壱岐は極東開発(株)が交渉し、対馬では(有)共和開発(現在株式会社)を現地に設立した。現在、唐津では約20万㎡、対馬では約90万㎡の用地を確保している。
空からの調査や要員の運搬用にセスナ機を購入し、大村飛行場の近くに「大村事務所」も設けた。空撮と人員輸送に活躍し、九州はもちろんのこと西日本全域、さらには韓国の済州島まで何度も飛行した。
調査には勿論、それぞれ所轄の官庁に届けを出した。実際に民間会社がこんなことをする例はないのだが、県と町の土木課に設計図と工程表を提出し、指導を仰いだ。災害が起こる恐れがあるので、労働基準監督署にも同様のものを提出した。
調査場所が史跡の場合は、各県の文教委員会の許可を得なければならない。特に唐津の場合は、豊臣秀吉の陣跡だったので多くの史跡があり、その許可を得るのが大変であった。また農地に関わる場合には、農業委員会の許可が必要になる。海洋の調査は海上保安庁九州管区の許可が、また自衛隊の許可が必要な箇所もある。
日韓の多くの協力者
国際ハイウェイ・日韓トンネルの啓蒙運動に協力的であったのは、高田源清氏(九州大学名誉教授)、武藤正行氏(国士舘大学客員教授)、大橋三郎氏(福岡県民教育協議会会長)、副島宏氏(元九州学院大学教授)達である。地質図作成において協力的だったのは北九州の地質学者達である。多久、唐津、東松浦半島の地質については、山崎達雄氏(九州大学名誉教授)から、壱岐は鎌田泰彦氏(長崎大学教授)、対馬は相原安津夫氏(九州大学教授)らから貴重なアドバイスを受けた。
韓国ではソウル大学の鄭昌熙教授を中心に巨済島の地表踏査が行われた。その上で深層ボーリング調査を行った。韓国側でも1986年10月に「国際ハイウェイ研究会」(尹世元会長)が、さらに同会の釜山支部(高冠瑞支部長)がともに設立された。その下で、地表踏査とボーリング調査が行われ、現地で注目を浴びた。
最大の問題は、対馬の西方海底下に落ち込んでいる大きな断層で、出水の可能性も大きく、最大の難所になるものと予想される。硬い地層から未固結の軟らかい地層へと掘り進むのが技術的に一番難しいからだ。
海底の地質調査には、対馬から調査坑(斜坑と水平坑)を掘る必要がある。海洋ボーリングは未固結ないし半固結のものが多く、コアの採取が難しいので、調査坑からの水平ボーリングを行う必要がある。そのため、その準備を進めており来年(2014年)の着工を計画している。
(『友情新聞』2013年12月1日号より)
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次回は、「一般財団法人 国際ハイウェイ財団」をお届けします。
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