2023.04.13 22:00
うまくいく夫婦仲の法則 10
アプリで読む光言社書籍シリーズとして「うまくいく夫婦仲の法則」を毎週木曜日配信(予定)でお届けします。
目指すは「夫婦仲良し、円満一家、どんな嵐もどんとこい」! 輝く夫婦、幸せな家庭を築くための秘訣(ひけつ)をご紹介します。
松本 雄司・著
第一章 家族についてもう一度考え直そう
11「親子の問題」は「夫婦の問題」①
なぜなのでしょうか? もう一歩突っ込まないといけないのです。つまり、同じことを言っても、子供が親に対してどう感じているかによって、素直に受け入れる場合と、反発する場合に分かれるのです。
分かりやすい話をしましょう。会社には上司とか先輩がいます。女性であれば婦人会やPTAなどでの人間関係があるでしょう。あるとき、上司が自分を叱った、あるいは間違いを指摘された。そのとき、日ごろ自分が尊敬している上司だったら、素直に聞けます。少し耳の痛いことを言われても「私のことを思って言ってくれているんだ」と理解して、素直に受け止めることができるでしょう。しかし日ごろ全然尊敬できない上司、内心では「コノヤロー」と思っている人から注意された場合、「はい、分かりました」と素直になれるでしょうか。言葉では「分かりました」と言っても、情ではパーンとはねています。情で受け入れないということは、実際は何も受け入れないということです。実は、このことが親子の間でも起こっているのです。だから同じ注意をしても、親を尊敬していない場合は、全く子供は受け入れない。情において反発するのです。そうなったら何を言ってもだめです。
では、なぜ子供が反発して受け入れないのか。それは本当の意味で両親を尊敬できないということなのです。
ある高校生と話したときのことです。お父さんは社会的に立派な立場だし、お母さんもPTA役員で、近所でも立派な家庭と思われている。人間的にも悪い人と思えないのに、子供はものすごく親に反発するのです。そこで、
「あなたは何でそんなに反発するの? どこが気に入らないの?」と聞くと、
「知らないさ。でも、とにかくむかつくんだ」と言う。
なかなか本音を言いませんでしたが、あるとき、やっと話してくれました。
「どうしても親を尊敬できない。何か言われるたびに、おなかの中にいつももたげてくるのは『この偽善者め』という気持ちだ」と言うのです。
なぜか。父親は社会的に有名な人だし、母親も教育熱心で知られた人である。人間としても確かに悪い人ではない。でも家の中では夫婦仲が悪い。夫婦が葛藤し喧嘩をしているのを全部知っているのです。子供は敏感です。それが本当に嫌でしようがないというのです。
ここからが問題です。世の中では今、どんな家庭が多くなっているかというと、「いいお父さん、いいお母さんだ。でも、二人は仲が悪い」という家庭です。子供にとってお母さんは口うるさいくらい自分のことを面倒見てくれる。お父さんは優しいし、小遣いもよくくれる。しかし、夫婦間で争いは絶えず、時には暴力も出る。そういう家庭が多いのです。そういう場合、子供は心から両親を尊敬できず、複雑な気持ちを抱いているのです。
ある女子高校生が言っていたのですが、どうしても両親を尊敬できないのはそこだと言うのです。それが嫌だというのです。自分の前では繕っていても、両親がどういう状況か分かるというのです。だから偉そうに自分に注意しても、「何を!」という気持ちになってしまうというのです。あるとき、父親が自分に対していろいろ言ってくる、そのときにとうとう言ってしまった。「私をかわいがってくれるのは嬉しいけど、そういう愛情があるなら、半分でもいいからお母さんにもっと優しくしてあげられないの!」と。父親は、一瞬ドキッとした表情で、じっと自分をにらんでいた。そして、何も言わずに別の部屋に行ってしまった。自分でも悪いことを言ってしまったなとは思ったけれども、つい日ごろから溜まっていた思いが出てしまったというのです。母親に対しても同じ思いがあるというのです。
先ほども言いましたが、「子供の問題」が今、深刻な事態に直面している。その根本は「親子の問題」である。しかし、さらに突き詰めていくと、結局は「夫婦の問題」である――ということにたどり着くのです。「夫婦の仲」が根本問題なのです。そこが課題です。そこを根源から解決していかない限り、日本の子供の問題は、もはや解決できないのです。
私の友人に中学や高校の先生がたくさんいるのですが、ある友人が教職を辞めてしまいました。
「あんなに教育に情熱を持っていた君が何で辞めるんだ。もう教育に情熱を失ったのか」と言ったら、
「何を言うか。おれは、真剣だからこそ辞めるんだ」と言うのです。
彼はものすごく教育に情熱を持って中学の先生になったのです。しかし「自分はもう結論が出た」と言うのです。自分は体当たりで子供たちのために取り組んできた。しかし学校は荒れる一方である。もはや日本では学校という立場、教師という立場では手後れだ、子供の問題を解決できない、という彼なりの結論を出したというのです。だから自分は辞めたというのです。
「自分はやりたいことがある」
「一体何を?」
「君はこの前、真の家庭運動とか言ってたよね。家庭問題を研究していると言っていたな。それなんだ。これからはその家庭問題に取り組みたいんだよ」
そこから深い話になって、時間が経つのを忘れて話をしました。
彼は現場を担当していたから、生々しい話をたくさん知っていました。親に毎日暴力を振るう子。「援助交際」している子。不良交遊が元で性病に罹(かか)り、子供の産めない体になってしまった子。内緒で人工中絶した子。卒業後、覚醒剤でボロボロになった子。引きこもりになって自殺した子……。彼は、時々目を赤くしながらとつとつと話しました。
(続く)
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次回は、「『親子の問題』は『夫婦の問題』②」をお届けします。