2023.04.02 13:00
神の沈黙と救い 20
アプリで読む光言社書籍シリーズとして「神の沈黙と救い~なぜ人間の苦悩を放置するのか」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
神はなぜ人間の苦悩を放置するのか、神はなぜ沈黙するのか。今だからこそ、先人たちが問い続けた歴史的課題に向き合う時かもしれません。(一部、編集部が加筆・修正)
野村 健二・著
第三章 失楽園での神の沈黙
二 失楽園での出来事
原罪の重さと神の沈黙
これはどういうことを意味するのか? 結論からいえば、無形の神は有形のアダムとエバを通じて宇宙を治めようとされたのに、その足場の一つであるエバが天使長ルシファーに占有されたということになるのである。その結果、宇宙の支配権が神からルシファー(サタン)に移る。これは、そういう意味をもつ大事件だった。
実際、パウロは、サタンのことを「この世の神」(第二コリント四・4)と呼んでいる。だから神はそのことを「死ぬ」という極限の言葉をもって警告されたのである。これは、天地がひっくり返る以上の大事件なのに、神はそれに干渉せず、沈黙をし続けられた。ここで、なぜかということが問題となってくる。「原罪」に対する「原沈黙」。ここに、神の沈黙のすべての事情を解く鍵があるといってよい。
さて、エバとルシファーが霊的に一体となること(霊的堕落)によって、神の宇宙経綸の足場の一つがルシファーに奪われた。しかしまだアダムが残っている。そこに神は希望をつないでおられた。ところがエバはルシファーと一体となった後で、自分は配偶者の選択を誤まったと気がついた。そこで再び神のもとに戻ろうとして、まだ人格(愛)が未完成であったアダムに近づいて「善悪を知る木」、すなわち自分を食べろということを勧め、アダムもその誘惑に乗った(肉的堕落)。この時アダムはまだ未完成であったので、こうなれば神はアダムをも捨てざるを得ない。
神にとってここでアダムを捨てることは、人間に全世界を添えてルシファーに進呈するに等しいことであったが、この時も神は沈黙を守り続けておられた。そうして、聖書を見ると、サタンが世界すべてを支配するまっただ中に、神は神側のいわばパラシュート部隊を送り、ゲリラ戦をもって人間を神の側に取り戻す作戦をしなければならなくなるのである。全宇宙を創造された神がどうしてそんな苦労をされなければならなかったか? そのなぞを次に解明していくことにしよう。
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次回は、「神の性質とそっくりに造られた」をお届けします。