2023.03.24 22:00
【テキスト版】
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第130回 共産主義の唯物弁証法の誤りを教えてください
ナビゲーター:阿部美樹
皆さん、こんにちは!
今回は、「共産主義の唯物弁証法の誤りを教えてください」という質問に対してお答えいたします。
弁証法とは、「弁(議論)」によって、「証(真理)」に近づく方法のことをいいます。弁証法の歴史は、古代ギリシャ(ソクラテスやアリストテレスなど)にさかのぼります。
当時の弁証法は「問答法」とも呼ばれ、他人と議論する際の技術を意味していました。
相手の話をよく聞いて、矛盾点や疑問点があれば、互いに指摘して検証します。そして互いに質問し、答えを探りながら真理に近づこうとする対話です。
目的は議論に勝つことではなく、真理に至ることです。この弁証法を大成したのがドイツの哲学者のヘーゲルです。
ヘーゲルの弁証法の要点は、以下のとおりです。
ある命題が存在すると、それと矛盾する、もしくは否定する反対の命題が存在します。両者は対立することで互いに結び付きます。初めの命題を「正」、否定の命題を「反」、統合された総合命題を「合」といいます。
このように、発展するためには「正・反・合」の3段階の過程があるといいます。
ヘーゲルの弁証法を、唯物論の立場で利用したのがマルクスです。
マルクスは、ヘーゲルの弁証法を継承しておきながら、「私の弁証法的方法は、根本的にヘーゲルのものとは違っているだけではなく、それとは正反対なものである」と批判しました。
マルクスの理論を基にして、エンゲルスが唯物弁証法を三つの法則に体系化し、さらにはスターリンが、唯物弁証法の要点を四つにまとめました。
第1は、相互関連性と変化です。
宇宙のあらゆる存在は他の存在との関わりの中で存在し、常に変化し続けているので、資本主義制度を社会主義制度で取り替えることができると主張しました。
また、労働者一人では力を持たないが、相互に関連性を持つことで変化をもたらすことができるので、「革命のために団結せよ!」と訴えました。
しかし勝共理論では、本来の相互関連性とは、「全ての存在は、自己(個体)のための目的と、より全体のための目的の二重目的を持つ連体である」と説明します。
第2は、量的変化の質的変化への転化の法則です。
人々の中に社会体制に対する不満が蓄積する「量的変化」があれば、社会はある時点で劇的に変化するという「質的変化」が起こると説明します。
まさに、資本主義社会から社会主義社会へと移行する変化が起きることを意味します。これは暴力革命を正当化するためのものであると言えます。
しかし勝共理論では、本来は「質」という性相と「量」という形状は目的に向かって同時的に変化し、しかも両者の相互関係においては、質は原因的で、量が結果的なのです。
第3は、矛盾の法則(対立物の統一と闘争の法則)です。
自然界では常に対立物が現れ、その対立物との闘争によってあらゆるものは発展するという考えで、共産主義の攻撃性・侵略性の最大の根拠となっている間違った理論です。
第4は、否定の否定の法則です。
チョウは卵を産むと否定されて死ぬ。さらに卵が否定されてチョウが産まれる。このように、否定の否定の法則は自然界を支配する法則だといいます。
しかし、チョウは卵を産み、繁殖という使命(目的)を終えて死にます。決して卵と闘争した結果ではありません。
要するに、共産主義社会へと暴力で革命することに、都合の良いところを探して法則を仕立てただけです。
勝共理論によれば、これは本来、闘争や否定ではなく、主体と対象の授受作用による円環運動によって存在の永続性を維持している姿なのです。
このように、四つの法則は、科学的な法則ではなく、自然界において全く当てはまらない、事実を捻(ね)じ曲げた恣意(しい)的な理論に他なりません。