2023.03.17 22:00
【テキスト版】
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第129回 共産主義の唯物論の誤りを教えてください
ナビゲーター:阿部美樹
皆さん、こんにちは!
今回は、「共産主義の唯物論の誤りを教えてください」という質問に対してお答えいたします。
世の中には神や霊魂などの存在を信じる有神論と、信じない無神論があります。
一般的には無神論と唯物論とはほぼ同じ意味にも使われますが、マルクスが説いた「共産主義唯物論」はかなり違います。
「神や霊魂の存在を信じることは人間にとって害悪だ。だからやめさせなければならない」と主張します。
マルクスの唯物論は、より強烈で、攻撃的なので「戦闘的唯物論」ということもあります。
日本では、特定の宗教を信じていなくても、神や仏、あるいはご先祖様といった存在を、なんとなく信じている人がたくさんいます。
しかし共産主義唯物論では、「この世には物質しか存在せず、神や霊魂は存在しない」「人間の心は脳の電気信号のようなものだ」「宗教はアヘンだ」と言います。
そうなると、人間は単なる物質だというわけですから、その辺の転がっている石ころと同じ価値だということになります。
共産主義に反対し抵抗した人がひどい弾圧を受けて殺されたのは、徹底した唯物論が広がった結果といえます。
マルクスが生きた当時のヨーロッパはキリスト教社会でした。キリスト教の価値観では、殺人は重罪であり、暴力革命はできません。
マルクスは「神に復讐したい」と考えていたので、「神はいない」という理論をつくり上げました。
そしてさらに、暴力革命を正当化する理論にしたのです。
共産主義唯物論の特徴を二つ紹介します。
第1の特徴は、「宇宙の根本は物質である」と考えることです。
マルクスが生まれた当時は、「物質は均質な究極粒子から成る」というニュートン力学が主流であり、その後にドルトンの原子説、アボガドロの分子説に発展しました。
また、メンデレーエフによって元素の周期律が発見されました。マルクスは、このような物質観を使って唯物論を正当化しました。
「この世界は全て元素から成り立っている。元素は物質であり、宇宙の根本は物質である」「神や霊魂といった曖昧な存在は、元素の周期表にはなく、非科学的であり、存在しない」という考えです。
しかし、神と霊魂の存在と、元素の周期表の発見は別の次元の話なので、神と霊魂の存在を否定するものではありません。
宇宙の根本は、精神的存在と物質的存在が調和的に統一されて存在しています。
この考え方を、唯心論と唯物論に対して唯一論といいます。
第2の特徴は、「サルが労働によって人間になった」と考えることです。
ダーウィンは「あらゆる生物は神が創造したのではない。人間を含め、弱肉強食や生存競争の中で進化してきたのだ」と主張しました。
この進化論は、「神による創造論」への反発として、生物学において唯物論を主張した理論でした。
共産主義を理論体系化したエンゲルスは、進化論を取り入れることで共産主義唯物論をさらに補強できると考えたのです。
しかし、近年の研究によって、進化論は科学的に誤りであることが認められるようになりました。
エンゲルスは、「サルの群れから人間社会を区別する特徴的な違いとして見いだされるものは何であろうか?」「それは労働である」と結論付けました。
しかし、サルが労働によって人間になったという科学的根拠は存在しません。ましてや労働という行為によってサルが人間の遺伝子を獲得することなどあり得ないことです。
労働は人間の重要な営みですが、人間の本質というよりも、愛と真善美の価値を実現するための手段に過ぎません。
このような共産主義唯物論の誤りを知って、間違った考え方に振り回されないようにしましょう。