2023.03.16 22:00
新 堕落性の構造 71
現代人に不幸を招来する「心のゆがみ」。そんな悩みの尽きないテーマをズバッと解説! 人間堕落の根源からその原因を究明している一冊です。毎週木曜日配信(予定)でお届けします。
阿部 正寿・著
20. 自己保全よりも他のために生きる
◉人間の価値は企業で決まる?
最近、新聞紙上に発表された女子大生の人気企業という記事によると、1位はNTT、2位は東京海上火災、3位は積水ハウス等々となっています。これは毎年発表されているもので、時により消長はありますが、いずれも上位を占めるのは名前の売れた大企業ばかりです。男子学生の人気企業も毎年発表されますが、女子学生のそれと似たり寄ったりです。学生が大企業を志向することが一概に悪いというわけではありませんが、考えさせられる問題もあります。
大企業に就職するメリットはまず、①安全であること、②給与も高く福利厚生も充実していること、③大企業に働くというステータスを得ること等々です。意外と強いのは③のステータスです。長崎市のM重工といえば世界的大企業の工場ですが、人員整理のために、もっと給料の高いほかの会社に仕事を斡旋(あっせん)しても行きたがらないということでした。理由は、給料は多少安くてもM重工に勤めていれば嫁の来手もあるが、名の知れない会社だと嫁ももらえないということでした。
日本ではその人の人格とか能力で判断するのではなく、どこの企業に働いているかで人間の価値を決める傾向があります。大企業でも、上は社長から、下は掃除婦までいます。どこに勤めているかより、何をしているかが重要なのですが、日本ではどの会社に勤めるかのほうが重要なのです。これは欧米では考えられないことです。欧米ではどの会社かより、社長か運転手かのほうが重視されます。
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次回は、「米国はパイオニア精神で発展」をお届けします。