https://www.kogensha.jp/shop/detail.php?id=4141

神の沈黙と救い 17

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「神の沈黙と救い~なぜ人間の苦悩を放置するのか」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
 神はなぜ人間の苦悩を放置するのか、神はなぜ沈黙するのか。今だからこそ、先人たちが問い続けた歴史的課題に向き合う時かもしれません。(一部、編集部が加筆・修正)

野村 健二・著

(光言社・刊『神の沈黙と救い』より)

第三章 失楽園での神の沈黙
二 失楽園での出来事

へびの正体

 さて今ここで、原罪(善悪を知る木の実を食べること)は、乳飲み子をほうり投げて銃剣で受けることなど比較にならないほど悪いことだといった。では一体、原罪とはどういうもので、またなぜそれほどの極悪なのであろうか。

 まずここで誘惑した「へび」とは一体何であろう。へびが口を開くはずはないから、これは比喩(ひゆ)であることは間違いない。

 このことについて聖書の末尾にあるヨハネの黙示録を見ると、「この巨大な龍、すなわち、悪魔とか、サタンとか呼ばれ、全世界を惑わす年を経たへびは、地に投げ落とされ」(一二・9)とあるので、「へび」とは悪魔、サタンの比喩であるという解釈が通説となっている。

 では、サタンとは何か。

 「神は、罪を犯した御使(みつかい)たちを許しておかないで、彼らを下界におとしいれ、さばきの時まで暗やみの穴に閉じ込めておかれた」(第二ペテロ二・4)。「主は、自分たちの地位を守ろうとはせず、そのおるべき所を捨て去った御使たちを、大いなる日のさばきのために、永久にしばりつけたまま、暗やみの中に閉じ込めておかれた」(ユダ6)。これらの聖句から、御使、すなわち天使が罪を犯し、おるべき所を捨て去ったということが分かる。

 神が創造されたものにはすべて存在位置があり、この位置から離れれば神の創造目的にかなわないことになり、価値を失う。あるいは、マイナスの価値とさえなる。これは「堕落」(本来の位置と状態の喪失)である。これらのことから、サタンとは、罪を犯して堕落した天使のことであるということで、これも多くの神学者の見解に一致が見られる。

 さらに、「黎明(れいめい)の子、明けの明星よ、あなたは天から落ちてしまった」(イザヤ一四・12)とあるところから、その罪を犯したのは「明けの明星」(ルシファー)という名の天使長であるということも特定されている。

---

 次回は、「原罪とは何か」をお届けします。