2023.02.05 13:00
神の沈黙と救い 12
アプリで読む光言社書籍シリーズとして「神の沈黙と救い~なぜ人間の苦悩を放置するのか」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
神はなぜ人間の苦悩を放置するのか、神はなぜ沈黙するのか。今だからこそ、先人たちが問い続けた歴史的課題に向き合う時かもしれません。(一部、編集部が加筆・修正)
野村 健二・著
第二章 神の沈黙を考える四つの立場
三 情神論
ピルグリムの試練
信仰の自由を求めてメイフラワー号でアメリカ新大陸に渡った清教徒――ピルグリム(「巡礼」の意)たちも、上陸した後は大変な苦労をした。
航海に出発したのは、英国からの移民も含めてメイフラワー号90人、スピードウェル号30人、1620年8月5日のことであった。
しかし、スピードウェル号は老朽船で、出航後、2、3日で水がもれ始め、やむなくまた港に戻り修理をしてもう一度出直したが、300マイルほど進んだところでまた故障を起こした。そこでとうとうスピードウェル号はあきらめ、メイフラワー号に102名が乗船することになり、最初の出発から1カ月後、9月6日にようやく本格的に海に乗り出すことができた。乗船者は18名ほど減ったが、残った者はおおむね独立分離派の清教徒であり、むかし士師ギデオンがその軍勢の数を減らして強敵に当たったと聖書にあるように(士師記七章)、神が人数を減らして精鋭とされたのだろうとむしろ意気が揚がった。途中猛烈な暴風雨に襲われるなど数々の試練に遭ったが、それを乗り切ってようやく11月、新大陸のプリマスに到着した。
11月11日、自治のためのメイフラワー契約書に41人が署名し、宿泊所を建てた。思いがけず出航が手間取ったので目的地に着いた時にはすでに厳寒、食料事情は極端に悪かったが、春まき用の種麦には絶対手をつけず、年を取った者から順次食を断ったと伝えられる。
幸い異教徒であるインディアンにも襲われることなく、後でトウモロコシの作り方を教わったほどの友好関係が保たれたが、病人が続出し、もう一度春の太陽を仰ぐことができたのは50名ほどであった。実におよそ半数が失われたわけである。
春に開墾、植え付けを行い、その秋多くの収穫を得て神に感謝をささげた。それが今、毎年11月第4金曜日に行われる感謝祭である。
ピルグリムたちは迫害にこそ遭わなかったが、新大陸に到着した冬に、飢餓と病気で半分が死ぬという辛酸をなめているのである。これも神の沈黙の例の一つではなかろうか。
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次回は、「情神論では説明できない『神の勝利』」をお届けします。