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青少年事情と教育を考える 219
父親の育児への関わりが子供のメンタルを守る

ナビゲーター:中田 孝誠

 このところ、父親の育児休暇が話題になっています。
 そうした中、乳児期に父親が育児に関わることで子供のメンタルヘルスの不調を予防する可能性があるという研究が、国立成育医療研究センターから今年1月に発表されました。

 同センターでは、2001年に子供が生まれた家庭を対象に、父親の育児への関わりの多さと、子供が16歳になった時のメンタルヘルスとの関連を分析しました。

 データは、文部科学省と厚生労働省の「21世紀出生児縦断調査」を使用しています。
 約1万8000人の子供を対象に、「最近2週間、私は明るく、楽しい気分で過ごした」「落ち着いた、リラックスした気分で過ごした」「意欲的で、活動的に過ごした」「日常生活の中に、興味のあることがたくさんあった」といった質問をして、「いつも」から「まったくない」まで回答してもらっています。

 研究グループはこのデータをもとに、父親の育児への関わり(「おむつを取り換える」「入浴させる」など)が少ない世帯から多い世帯まで四つに分けて、16歳になった時点での子供のメンタルヘルスを比較しました。

 すると、父親の関わりが最も多かったグループは、少なかったグループに比べて、子供のメンタルヘルスが不調になるリスクが10%低くなっていました。
 つまり、乳児期に父親が育児に関わることが多いと、子供のメンタルヘルスの不調を予防できる可能性があるというわけです。

 父親が育児に関わることの影響についての研究は欧米など海外で進んでいますが、アジア圏では初めてです。
 海外の研究では、特に子供の社会性や知的・情緒的な面の発達に良い影響を与えるといわれ、自己肯定感や他人への共感性も育つとされています。

 また、主に母親との間で形成されるといわれている「愛着関係」(アタッチメント)も、父親の関わりの質によって母子間と変わらないほどの関係が形成されるといった研究もあります。

 そして、父親と母親の関係が子供が育つ家庭環境をつくり上げます。父親が育児や家事はもちろん、母親とコミュニケーションをとろうとするほど、母親のストレスが減少し、夫婦関係も良くなるとされています。

 専門家の研究では、父親が子育てに関わると、父親の中に愛情ホルモンが増えて子供との関係が深まります。
 いわば父性のスイッチが入るわけです。もちろん母親の育児のストレスが少なくなり、夫婦関係が良くなることが期待されます。

 父親の育児休暇は、こうした子供の育ちの観点からもっと議論すべきだと思います。