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家族の絆づくり 253
質問型コミュニケーションの効果

ナビゲーター:阿部 美樹

相手を見て接し方が変化する?
 コミュニケーションを通して関係性を深めるために大切なことは何でしょうか。

 カウンセリングやコーチングを行う専門家が最も大切にしていることは、「傾聴と質問」です。
 専門的な相談の場だけでなく、家族関係や職場の人間関係など、日常の身近な人間関係においても同じように大切です。

 ではなぜ、聴くことや尋ねることが必要なのでしょうか。
 それは、誰であっても「神のような価値」を持つ人間であり、「尊敬心」を持って接するべきだからです。

 例えば、目の前に信頼する人や尊敬する人がいたとすれば、「一つ、質問してもよろしいですか?」「この件についてはどのようにお考えですか?」と、自然に「傾聴と質問型コミュニケーション」になることでしょう。

 反対に、目の前の人が自分よりも未熟な人、課題がある人と考えると、教えたり、正したり、励ましたりしようとするなど、知らず知らずのうちに上から目線で話をしがちです。


円滑なコミュニケーションになる秘訣(ひけつ)
 話す相手の年齢や性別、経験、能力、地位などにかかわらず、「傾聴と承認と質問」を中心としてコミュニケーションをすることができれば、円滑なコミュニケーションとなるだけでなく、「信頼関係」を育むことができることでしょう。
 なぜならば、誰もが話を聞いてもらうことはうれしいことだからです。

 どんなに心を閉ざしている人でも、不平不満を持っている人でも、不信感を持っている人であっても、不思議なことに話を聞いてもらううちに心が軽くなり、心を開くことが多いものです。

 さらに、「そうですね!」「なるほど、そうなんですね!」とうなずきながら、共感や承認がなされていくと、さらにうれしくなります。
 誰もが「認められたい」という承認欲求を持っているからです。
 そして傾聴と承認がなされていくと、「安心・安全な心地よさ」を感じるようになります。

 このような気持ちの土台の上に質問されると、深い気付きが与えられたり、新しい発想や知恵が与えられたりすることがあります。
 また、深く考えるきっかけになり、当事者意識を持った答えを見いだすことでしょう。

 ですから、「教えてあげる」ことが一番の親切なのではなく、それ以上に「尋ねてあげる」ことの方が相手のためになるのです。
 誰に対しても、どのような状況であっても、安易に決めつけることなく、相手の話を傾聴・承認し、質問をしてみましょう。