2023.01.30 22:00
「性解放理論」を超えて(70)
「統一思想」すなわち「神主義」「頭翼思想」によって生きるのか、神の言(ことば)を否定する思想を選択するのか…。
「『性解放理論』を超えて」を毎週月曜日(予定)にお届けします。
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大谷明史・著
七 日本の性解放理論への批判
今日、日本では、文化的な共産主義と言うべき性解放理論が猛威を振るい、伝統的な純潔教育はほとんど顧みられなくなってしまいました。日本の性解放理論を構成しているのは次のような思想です。
①ジェンダー・フリー思想
②性の自己決定論
③ネオ・マルクス主義フェミニズム
(一)ジェンダー・フリー思想
(1)「ジェンダー・フリー」の登場
「ジェンダー」とは、社会的、文化的に形成された性であるといいます。それは本質的なものでなく、家父長的な、男性支配の社会で形成されたものであるとして、「ジェンダー・フリー」思想は、そのようにして形成された「男らしさ」「女らしさ」を抹殺しようとします。
さらに結婚も男女に限定すべきでなく、同性愛者のゲイ(G)、レズビアン(L)、異性愛(男女の愛)と同性愛の両方を行うバイセクシャルの人(B)、自分が認める性が身体的性別と対応しないトランスジェンダーの人(T)を、異性愛者と同列的に扱うべきであると主張します。そしてLGBT運動が推進されています。その結果、正常な男女の愛を軽視するようになるのです。
文化人類学者の山口智美は、1995年には「ジェンダー」と「ジェンダー・フリー」という言葉が登場し、日本の女性運動にとって、1995年は重要な転換点であったと次のように述べています。
1995年前後は、日本の女性運動にとって、重要な転換点だった。94年、男女共同参画審議会がつくられたことで耳なれない「男女共同参画」という言葉が登場し、95年には、同審議会による「男女共同参画ビジョン」と「男女共同参画2000年プラン」のなかで、「ジェンダー」という言葉が登場した。そして、「ジェンダー・フリー」という言葉も東京女性財団によって紹介された。……その一方で、この時期、「フェミニズムはおわった」「ポストフェミニズム」といったような記事もよく見かけた(※1)。
そして1995年は、女性解放運動としてのフェミニズムを超えて、男女の性別を否定し、解消する、「ポストフェミニズム」に転換した年であり、女性解放運動は、女性の権利を主張する運動から、学者を中心とした思想の闘いに転換した年であると言います。
この「ジェンダー・フリー」が登場した95年が、行政と学者主導の運動に転換した重要な時期だったことを、ふたたび思い起こしてほしい。……今後、女性運動は何を達成目標として運動をしていくべきなのか。そういった、根源的な問いとして、95年の転換を考えるべきであろう(※2)。
2002年には、男女共同参画審議委員であった大沢真理(東大教授)は、『21世紀の女性政策と男女共同参画社会基本法』の中で、「『男女共同参画』はgender equalityをも超えて、ジェンダーそのものの解消、『ジェンダーからの解放(ジェンダー・フリー)』を志向すること、これである(※3)」と言い、ジェンダー・フリーはジェンダーからの解放である、と定義したのです。
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※1 山口智美「ジェンダー・フリー論争とフェミニズム運動の失われた10年」『バックラッシュ!』双風社、2006(244)
※2 同上(279)
※3 同上(260)
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次回は、「ジェンダー・フリー思想の理論的背景」をお届けします。