コラム・週刊Blessed Life 248
ウクライナ戦争はいつ終わるのか?

新海 一朗

 ウクライナ戦争は一体いつ終わるのか。
 ウクライナを支えるEU(欧州連合)と米国、そして日本はどこまで支援し続けることができるのか。
 戦争終結の行方が大いに気になるところです。

 また、ロシアを支える中国とイラン、北朝鮮の動向についても懸念を抱かざるを得ません。
 特に中国はロシアのウクライナ侵攻を、中国の台湾侵攻のタイミングと重ね合わせて考えている節がありますから、ウクライナ戦争が、いつ、どんな形で終結を迎えるのか、そのことが非常に重要なことであると思われます。

 東京大学先端科学技術研究センター専任講師で、ロシアの軍事安全保障の専門家でもある小泉悠氏は、ウクライナ戦争の行方に関して、①エスカレーションするシナリオ ②戦闘が止まるシナリオ ③ダラダラ続くシナリオ、の三つがあると予想しています。

 エスカレーションするシナリオに関しては、ロシアが核を使うとか、総動員をかけて何百万人も兵士を投入して戦うというシナリオであるとし、プーチンとしては、「エスカレーション」は、国民からの反発が大きいとか、国際社会からの反応が怖いとか、いろいろと彼自身の政権が揺らぎ、危ないことであると踏んでいるようだと述べています。

▲プーチン大統領

 次に、戦闘が止まるシナリオに関しては、ゼレンスキーとプーチンがどこかで停戦交渉をするというシナリオであると語り、実は米国が2022年の夏ぐらいから何回かウクライナに対して「そろそろ交渉したらどうだ?」というシグナルを出しているようだということです。
 しかしゼレンスキーはこれに非常に反発して、その選択を蹴っていると述べています。

 ウクライナからすれば、一旦停戦しても「ロシアがまた侵略してくるまでの時間的余裕を与えるだけじゃないのか?」と見えるようです。
 実際、2014年と15年にも、第1次・第2次ミンスク合意というのを結んでいるけれど、それから8年たってロシアは戦力を回復させてまた攻めてきたことを思うと、安易に停戦してもしょうがないという感じがあるというのです。

 ウクライナが簡単に停戦には応じないだろうと考えると、一番可能性が高いのは「ずっと今のような戦争をダラダラ続ける」ことだと小泉氏は指摘します。
 ダラダラ続くシナリオとはどんなものなのでしょうか。

 2014年に最初のロシアとウクライナの戦争が起きてからその後8年間、ロシアが取ってきた戦略が、実はこれだったと言います。
 ウクライナの一部をずっと紛争地域化して、勝ちも負けもしない紛争をずっとダラダラ続ける。ウクライナはそれによって国力を疲弊させられ、しかもロシアからは「兵を引いてほしければ、こういう条件を飲め」というふうに強要される弱みを持つことになる。しかも紛争国家なので、ウクライナはNATO(北大西洋条約機構)にも入れない。

 このように、ロシアとしては戦争をやっているだけでウクライナの動きをいろいろと縛れるので、実はこの戦争は相当長く続くのではないかという見通し、予測が立つというのです。

 果たしてそうなるのかどうなのか。
 ウクライナ戦争の終結が簡単ではないことは間違いありません。
 ゼレンスキーも強気であり、ドンバス地域だけでなく、クリミア半島まで取り戻すと言っていますから、こうなると、ますます、停戦交渉は困難になり、「ダラダラ続く」ことになると予想されます。

 ロシアとウクライナ戦争が世界に影響を与え、世界がロシアとウクライナに影響を与えていることは明らかです。
 ウクライナ戦争の動向は、世界の動向でもあると言えるのです。