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「性解放理論」を超えて(67)

クィア理論~③セジウィック

 「統一思想」すなわち「神主義」「頭翼思想」によって生きるのか、神の言(ことば)を否定する思想を選択するのか…。
 「『性解放理論』を超えて」を毎週月曜日(予定)にお届けします。

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大谷明史・著

(光言社・刊『「性解放理論」を超えて』より)

六 フェミニズムを超えて
(三)クィア理論

2)セジウィック

①セジウィックの思想
 クィア理論の原動力とも、王母(Queen Mother)とも言われるセジウィックは「ホモソーシャル」なる概念を提示しました。

 ホモソーシャルとは、異性愛男性の友情によって支えられた連帯関係を言います。セジウィックによれば、古代ギリシアから近代に至るまで西洋はホモソーシャルな社会であったが、ホモソーシャルはホモセクシャル(同性愛)と断絶したものでなく、すなわち、連続したものであったのであり、ホモソーシャルな社会は潜在的に同性愛的であったと言うのです。

 ホモソーシャリティーとは、異性愛男性の集合体ですが、そこにおいて男性の絆(きずな)を切り裂きかねない女性(レズビアン)と、男性集合体を女性から切り離して同性愛集団化しかねない同性愛男性(ゲイ)は排除されます。それゆえ、ホモソーシャリティーはホモフォビア(同性愛者嫌悪)とミソジニー(女性嫌悪)に支えられた父権制のホモソーシャル社会なのです(※21)。

 セジウィックは、「男性が異性愛関係をもつのは男同士の究極的な絆を結ぶためである(※22)」、「女性は、男同士の絆を維持するための溶媒(※23)」にすぎないと言います。すなわち、ホモソーシャルな社会では、女性は男同士が絆を結ぶための手段になっていると言うのです。セジウィックは、レヴィ=ストロースの「女性の交換」論──女性は、婚姻の相手としてではなく、男同士の絆を揺るぎないものにするために交換される物──をフェミニズムの視点から見たのです。

②セジウィックへの批判と「統一思想」の見解
 セジウィックによれば、男性同士、女性同士の同性愛はホモソーシャルという男性同士の友情に危険なものとみなされて、ホモソーシャル的父権制社会では排除されていると言いますが、そうではありません。同性愛は真なる異性愛から逸脱したものだから、人間は本性的に同性愛を避けようとするのです。

 セジウィックは、男同士の友情の中には、同性愛が潜在していると言いますが、同性愛は異性間の性愛の歪(ゆが)んだもの、変形であり、それに対して友情(兄弟姉妹の愛)は本来、性愛とは無関係なものなのです。

 セジウィックはまた、レヴィ=ストロースの「女性の交換」論の観点からホモソーシャルな社会を考察しています。女性が歴史的に男性から虐げられてきたのは事実ですが、それは人間始祖のエバの堕落行為によって、女性がその罪を償わなければならなくなったからです。しかし、今日、再臨の摂理の進行とともに、女性の贖(あがな)いの歴史(蕩減〈とうげん〉復帰の歴史)が終わり、男性と女性が同等な位置と価値を持つことができる時代になりました。20世紀に入り、女性解放運動が台頭するようになったのは、そのような時代的背景があったのです。したがって、女性を交換する物と見るのは誤りです。

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21 大橋洋一「キーワード解説」、竹村和子編『ポストフェミニズム』作品社、2003198
22 イヴ・K・セジウィック、上原早苗・亀澤美由紀訳『男同士の絆:イギリス文学とホモソーシャルな欲望』名古屋大学出版会、200176
23 同上(244

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 次回は、「フェミニズムを超えて、真の男女の愛へ①」をお届けします。


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