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「性解放理論」を超えて(63)

ポストモダン・フェミニズム~②イリガライ

 「統一思想」すなわち「神主義」「頭翼思想」によって生きるのか、神の言(ことば)を否定する思想を選択するのか…。
 「『性解放理論』を超えて」を毎週月曜日(予定)にお届けします。

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大谷明史・著

(光言社・刊『「性解放理論」を超えて』より)

六 フェミニズムを超えて
(二)ポストモダン・フェミニズム

2)イリガライ
 ソフィア・フォカによれば、イリガライは、「精神分析は家父長的、男根中心的で母や女のセクシュアリティを十分に認識してこなかった」とフロイトの精神分析を批判しました。そして「家父長制を脱構築するためには、文化を女の側から読み直すことが必要である」と述べ、ユートピア的なポスト家父長的未来に希望を託し、「デリダの脱構築を使って、古今の主要哲学書が“男性的想像力”で書かれていることを跡づけ、“とくに女の側から、哲学的伝統を問い直そう”」としました。イリガライは、「父なるものと同等の地位を母なるものに与えることで、性的差別を認識できる未来を概念的に構想した。そのためには、女は前エディプス期の想像界──言語のまえにある前=家父長的世界──に戻るべき」であると主張しました(※5)。

 イリガライは家父長的男根体制を否定し、全く異質な女性主体、多様な快楽に基づく女性主体のあり方を主張しました。しかし男性から独立した女性主体の快楽はあり得ません。女性特有の快楽も、男女が真(まこと)の愛で愛し合うときに実現されるのであり、一方が他方と関係なく、独立的に実現できるものではありません。

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※5 ソフィア・フォカ、レベッカ・ライト『ポストフェミニズム入門』(59-61

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 次回は、「ポストモダン・フェミニズム~③シクスー」をお届けします。


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