2022.12.09 22:00
【テキスト版】
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第116回「信教の自由」と「政教分離」について教えてください
ナビゲーター:阿部美樹
皆さん、こんにちは!
今回は、「『信教の自由』と『政教分離』について教えてください」という質問に対してお答えいたします。
人間には体だけでなく心があるように、真理の探究においても、外的真理を探究する科学だけでなく、内的真理を探究する宗教があります。
宗教は、不可欠なものです。
日本では「信教の自由」は憲法で保障されています。
信教の自由とは、「宗教を信仰すること、またはしないことを権利として保障したもの」です。
日本国憲法第20条では次のように規定しています。
第1項 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
第2項 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
第3項 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
このように、第1項前段は「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する」と規定し、第2項では「何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない」と規定しています。
また、憲法 第20条に違反する行為とは次のような行為です。
まず、国が特定の宗教を正統として信仰を強制したり、干渉したりする行為です。
次に、特定の信仰を有することや有しないことを理由に刑罰その他の不利益を加える行為です。
さらに、人の信仰を強制的に告白させたり、宗教的な意味を持つ発言や行為を強制したりする行為です。
これは、江戸時代のキリスト教徒の摘発を目的に民衆の信仰する宗教を調査する「宗門改」(しゅうもんあらため)や「絵踏(えぶ)み(踏み絵)」などがありました。
このように、信教の自由は具体的には、(1)内心における信仰の自由、(2)宗教活動の自由、(3)宗教結社の自由の三つを意味します。
ただし、宗教活動が反社会的であったり犯罪行為を伴ったりする場合は、その自由も制約を受けざるを得ないことは言うまでもありません。
しかし、たとえどんなことがあっても、個々人の心の中の信仰は何らの制約も受けません。
このような信教の自由を実効的に保障するために、厳格な「政教分離の原則」が採用されました。
政教分離の原則とは、国家があらゆる宗教に対して原則として中立的立場に立つことを要請する原則であり、国家の非宗教性の原則ともいいます。
日本国憲法は、20条3項で、国およびその機関による宗教的活動を禁止するほか、89条では宗教団体に対する公金の支出を禁止するなど、厳格な分離原則を定めました。
しかし、厳格な分離といっても、国家と宗教との関わり合いをいっさい排することは実際上不可能です。
問題は、憲法がどの程度の関わり合いを禁じていると判断するかです。
判例としては、宗教との関わり合いが「相当とされる限度を超える」場合、つまり、その「目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような」場合には、政教分離原則に反して許されないとなります。
いずれにしても、信教の自由が守られ、本来の宗教や信仰の目的が阻害されない社会になることを心から願うものです。