世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

海上自衛隊の国際観艦式に韓国が参加

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、1031日から116日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。

 麻生太郎副総裁、韓国大統領と会談(112日)。イスラエル、ネタニヤフ右派政権発足へ(3日)。中国ゼロコロナ政策、近く大幅修正か(4日)。海上自衛隊の国際観艦式に韓国艦艇が参加(6日)、などです。

 海上自衛隊が116日、神奈川県沖の相模湾で岸田文雄首相が出席する中、「国際観艦式」を行いました。
 今回は、海上自衛隊から20隻、海外から米国や豪州、韓国など12カ国の艦艇18隻などが参加。中国は招待しましたが、艦艇の派遣を見送っています。

 日本での開催は20年ぶり、2002年以来となります。
 注目すべきは、韓国の参加です。国際観艦式とは別に自衛隊が行事として開く観艦式に海外艦艇を招く場合もありますが、これを含めると、韓国艦艇が日本の観艦式に参加したのは2015年以来7年ぶりとなります。

 国際観艦式とは、通常、国家的な節目となる記念日などに多数の外国海軍艦艇の参加を得て行われるものです。
 3年に一度行っている通常の観艦式よりも規模が大きく、「西太平洋海軍シンポジウム」という会合に合わせて、30の加盟国が各国持ち回りで開催しているのです。
 日本の主催は、海自創設50周年を記念して2002年に初めて実施した前回に続き、実に20年ぶりで2回目となったのです。

 韓国の参加は、北朝鮮が弾道ミサイル発射を繰り返し、緊迫する安全保障環境を踏まえて日本との協力関係を深化させようとする強い意志の表れです。
 尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は、自衛隊との共同訓練を巡って、野党が「親日国防だ」と非難する中、国内の反対を押し切って日本での国際観艦式への参加を決めたのです。

 周知のように、日韓関係はいまだに深刻な問題を抱えています。
 2018年以降に関係が急激に冷え込みました。韓国が開いた国際観艦式で海上自衛隊に旭日旗を掲揚しないように求め、日本は参加を取りやめた経緯があります。さらに同年、韓国海軍が自衛隊機に火器管制レーダーを照射する事件が起きています。

 しかし、今回韓国から派遣された補給艦の乗組員は6日、岸田首相が乗艦した護衛艦「いずも」に敬礼したのです。
 日韓関係は転換しつつあります。潮目の変化となったのは、米国や日本との関係を重視する尹錫悦大統領が誕生した今年5月以降です。
 9月には、首相と尹氏が米ニューヨークで非公式の「懇談」を行いました。さらに、日米韓による対潜水艦作戦の共同訓練が約5年半ぶりに日本海で実施されています。

 韓国国内では、野党「ともに民主党」は、今回の観艦式参加についても「日本の侵略を容認するというのか」などという極論を持ち出し、「誤った判断で、国民の怒りを買うほかない」と批判し続けています。

 朴振(パク・チン)外相は、文政権と同じ革新系の金大中(キム・デジュン)、廬武鉉(ノ・ムヒョン)両政権時代にも日本の観艦式に参加したり、自衛隊艦艇を自国に受け入れたりした前例があることを明示し、「中国を含め自衛隊艦旗を問題視する国はない」と説明しました。

 尹政権はまた、日韓間の最大の懸案である「徴用工訴訟」問題でも、日本企業への実害を避ける解決策を模索しています。
 尹政権の支持率は30%を割り込む状況ですが、尹大統領は関係改善に力を注いでいるのです。



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