2022.11.01 12:00
世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
日本の「トマホーク」購入案、米も積極的
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
今回は、10月24日から30日までを振り返ります。
この間、以下のような出来事がありました。
アジア系初の英首相、スナク氏就任(25日)。米ブリンケン国務長官、中国は台湾に一段の圧力(26日)。韓国、自衛隊の観艦式に参加決定(27日)。日本政府、反撃能力として「トマホーク」購入を検討(27日)。米大統領G20出席へ、習氏も参加か(28日)。ソウル・梨泰院(イテウォン)の狭い坂道で突然の惨劇(29日)、などです。
日本政府は、「反撃能力」の具体的手段として「トマホーク」の購入を検討していることが、27日判明しました。
トマホークとは、米国が1970年代から開発を始めた長射程巡航ミサイルで米国が誇る精密誘導兵器の一つです。
ジェットエンジンで低空を飛来するため迎撃が困難であり、射程は通常弾頭型で1300キロメートル以上、基本は艦艇発射ですが、潜水艦発射や地上発射の改良型もあります。なお、核弾頭搭載型は2010年に退役が決定されています。
政府が検討に入った背景は、これまでの想定より早いタイミングでの「台湾有事」をにらみ日本の防衛政策上の空白を埋めるためです。
これまでの計画では、国産の長射程巡航ミサイルの配備を予定しており、実質配備は2026年度以降とされています。
しかし、台湾情勢をはじめ日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増しており、トマホーク案が浮上したのです。
習近平総書記は第20回共産党大会における10月16日の演説で、武力行使放棄を約束しないと明言、中国軍はまた、8月には台湾周辺で軍事演習を実施、日本のEEZ(排他的経済水域)内にも弾道ミサイルを撃ち込んでいます。
これまでの軍事専門家の指摘では、台湾有事のリスクが高いのは習氏の党総書記としての3期目が終わる年に当たる27年との予測が多くありました。
しかしここにきて、早まるとの見方が相次いでいるのです。
ブリンケン米国務長官は10月17日、台湾統一について「中国が以前に比べてかなり早い時間軸で目指すと決意している」と述べ、米海軍のマイケル・ギルディ作戦部長は19日、台湾侵攻が23年までに起きる可能性は排除できないとの見通しを示しています。
米空軍は10月28日、嘉手納基地に常駐するF15戦闘機の老朽化を受けて11月から約2年をかけて退役させると発表しました。
英紙フィナンシャル・タイムズは専門家らの話として、切れ目のない巡回配備ができるかどうかは不透明であると指摘しています。
嘉手納基地が中国のミサイル攻撃にさらされる可能性を考慮すると、ローテーション方式には米国にとって利点があるとの見方を紹介しています。しかし日本にとっては懸念材料となるのは明らかです。
台湾周辺で軍事衝突が起これば、日本の南西諸島防衛への影響は避けられません。湾岸戦争やイラク戦争などの米軍の軍事作戦で実績があるトマホークを即戦力として早期に配備し、その後に国産ミサイルを活用する2段構えとなります。
防衛省は、自衛隊で使う場合、海上自衛隊のイージス艦の垂直発射装置を改修して運用すると見込んでいます。1発当たり数億円になると予想されます。
米側は売却に前向きな姿勢を示しており、交渉は最終局面に入っているといわれています。
オバマ政権時代にも日本側のトマホーク購入案件が出ましたが、米国側が動きませんでした。しかし今、米側が売却に前向きな姿勢に転じたのは、安全保障関連法や特定秘密保護法などの制定を通じ、日本への米国の信頼度が高まった証左と言えます。
平和を守るための抑止力は、「撃てば撃たれる」と相手側に警戒させてこそ機能します。さらに、米国に極度に依存した日本の「軽武装路線」を転換する決意を内外に示すことになるのです。
大きな転換点です。
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