2022.11.03 22:00
新 堕落性の構造 52
現代人に不幸を招来する「心のゆがみ」。そんな悩みの尽きないテーマをズバッと解説! 人間堕落の根源からその原因を究明している一冊です。毎週木曜日配信(予定)でお届けします。
阿部 正寿・著
15. 妻を虐待する夫の背後は堕落天使長
◉妻を奴隷視する夫
先に挙げた例を見るまでもなく、私自身が直接面会した数多くの婦人たちのなかにも同じようなケースが多くありました。Y子さん(50歳)もその一人でした。彼女の場合も恋愛結婚した夫が、式後から暴力を振るい始め、以後30年間苦しみました。夫はあまり仕事もせず“飲む、打つ、買う”の三拍子で、その資金を得るためY子さんを働かせるありさまでした。
私は彼女に、「どうして人に助けてもらうなり、離婚するなりしなかったのですか」と尋ねました。
彼女は、「離婚をしようとしても夫がとりあってくれず、やっと家裁に手続きをしても、当日欠席して駄目になってしまいました。両親に助けを求めても恐れて、ただ我慢しなさいというだけでした。あるとき、あまり暴力を振るうので警察官を呼ぶと夫は寝たふりをして、警察としても手を下すことができず、結局帰ってしまいました。その後また暴力を振るわれました」と言うのです。
それで泣き寝入りしながら忍耐するという状態が続いていました。それでは家を飛び出してしまえばいいのにと思うのですが、それができないところに問題の複雑さがあるのです。
妻を虐待する夫は、暴行と暴行の間には妻を優しく扱い、離婚を申し出る妻に泣きついて夫婦関係を維持しようとするのです。妻も「夫は自分を必要としている」との幻想を抱き、夫を見捨てる勇気がなくなるのです。夫はそれを知って利用しているのです。このような夫が求めているのは、自分の思いどおりになり、身の回りの世話をしてくれて、望むときにセックスの相手をし、ウップン晴らしの対象になる奴隷でしかないのです。
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次回は、「暴力夫の正体は天使長」をお届けします。