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第4部 東洋に信仰を伝えた人々
⑦ウィリアム・ブース

(光言社『FAXニュース』通巻1061号[2005924日号]「キリスト教信仰偉人伝 李相軒先生のメッセージに登場した人々」より)

岡野 献一

 『FAXニュース』で連載した「キリスト教信仰偉人伝」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。(一部、編集部が加筆・修正)

救世軍創設、慈善運動行う

 救世軍の創立者ウィリアム・ブース(18291912)。彼の創設した「救世軍」は、またたく間に世界各地で宣教を展開し、1895年から日本で伝道。ブース自身も1907年に来日して、政府高官をはじめ各界から数万人の大歓迎を受け、明治天皇にもお会いするなどしました。

▲ウィリアム・ブース(ウィキペディアより)

14歳で身も心も神にささげる決意

 救世軍は、貧民窟(くつ)などに出かけて伝道し、神のみ言を伝えるのみならず、貧しい人々の生活を具体的に助け、禁酒運動や廃娼(はいしょう)運動を展開するなど、慈善運動や社会事業を行って、後世に大きな影響を残しました。日本でも慈善運動の一環として、クリスマスに街頭で「社会鍋」という募金を行っていることで有名です。

 さて、ブースはイギリスのノッチンガムに生まれます。父の事業失敗と死のために、若くして質屋に勤め、母と2人の妹の生計を助けます。当時のイギリス国教会の礼拝は冷たく形式的なものとなっており、彼は国教会から遠ざかり、メソジスト教会の礼拝に出席していました。

 転機は14歳の時です。「1分ごとに人が死んでいる」という説教の言葉に胸打たれ、救霊のため立ち上がることを決意。翌年、彼は日曜学校教室の一隅にひざまずき、涙を流してそれまでの罪を悔い改め、身も心も神にささげる決意をします。以来ブースは世俗的娯楽をすて、金銭の落ち度があるなら、それを相手に告白して弁償。

 日曜の教会の集会後、貧しい信者の家を訪ねて祈祷会をもち、貧民窟で説教。平日は朝7時から夜7時までの仕事を終えると、毎夜、すぐ椅子をかついで貧民窟に出かけ、伝道するのです。また、寸暇を惜しんで読書をするなど、大変な勤勉家でもありました。

 20歳の時、彼は6か条の決心をします。①朝の祈祷と早起き②雑談を避ける③謙虚と温柔④毎日のみ言訓読⑤神にゆだねる⑥この決心を毎日唱和し、克己精神を養う――そして彼は1852年、23歳の誕生日に世俗の職業を捨て、伝道師としての活動に専念します。

 彼は、妻カサリンと幸福な結婚をします。彼女は生涯を通じてブースの良き理解者、協力者であり、共に救世軍の伝道師として、宣教に大きく寄与します。

貧民窟の実情見て救いのため再出発

 1859年、ブース夫人は有名な説教者の説教を聞こうと道を急ぐ時、下町の路地に群がる婦人を見て、自分だけの霊的恵みを求めるのではなく、この人々の救霊のために尽くすべきだという霊感を受けます。そして「人々を無理やりにひっぱってきなさい」(ルカ伝1423節)というキリストの命令に応じようと思い立って、意を決して戸別訪問。伝道に大きな成果を収めるのです。

 さて、ブースが東ロンドンの貧民窟に入った時でした。集会からの帰宅中、泥酔する労働者、売春婦が群がる居酒屋の前を通り過ぎる際、天の声を聞きます。「おまえの勤労をこれほど多く要する場所が他にあろうか」と。

 帰宅後、彼は妻にこう告げます。「自分の終生の運命を発見した。今一度再出発せねばならない。相手に献金を乞うことさえできない」と。妻は祈って、「私たちは主にお任せしました。もう一度、一切を主にお任せできます」と答えます。こうして、ブース夫妻は、社会の最底辺層の救いのため挺身(ていしん)していくのです。

 1865年に伝道会(後の救世軍)が組織され、68年には伝道所13か所、毎週の集会数140か所、会衆が14千人に膨れあがりました。その道は平坦ではなく、迫害の連続でした。

 救世軍は無酒気なのに手を叩いて歌い、太鼓を鳴らし、ラッパを吹き、既成教会の型を破った伝道をしました。

 ブースは言います。「救世軍は、世の中の貧しく哀れな人を助けたいという一念から生まれた。胸の中に蒔(ま)かれた神の愛の種子が、成長発育したものにすぎない」

 「1分ごとに人が死んでいる」という切迫感から出発したブースの宣教は、神と人類の解放のために歩まれた真の父母様の心情と相通じるものがあります。

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 次回は、「スウェーデンボルグ」をお届けします。