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第4部 東洋に信仰を伝えた人々
⑥内村鑑三

(光言社『FAXニュース』通巻1050号[2005827日号]「キリスト教信仰偉人伝 李相軒先生のメッセージに登場した人々」より)

岡野 献一

 『FAXニュース』で連載した「キリスト教信仰偉人伝」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。(一部、編集部が加筆・修正)

1918年、再臨運動開始

 無教会主義の創始者であり、独立伝道者として日本キリスト教の基礎を築いた内村鑑三(18611930)。彼は「二つのJ(イエスのJesusと日本のJapan)」をこよなく愛し、また再臨期が近づいた1918年から1919年にかけて「再臨運動」を行うなど、後世に大きな影響を残しました。

▲67歳の内村鑑三(19285月/ウィキペディアより)

札幌農学校で信仰を持つ

 内村は上州(群馬県)高崎藩士の長男として、江戸小石川(今の文京区)の藩邸内に生まれます。父は儒学者でもあり、内村は数え5歳で「大学」を読むなど、幼少期より儒教的教育を受けます。彼の持つ主君への忠誠心、素朴な愛国心は幼少期に培われたのだと言えます。

 さて、内村が13歳の時、廃藩置県(はいはんちけん)で父が藩を退き、家が貧しくなります。父は鑑三を政治家にしようと考え、翌年、鑑三は東京外国語学校(東大の前身)に入学。しかし彼は「自分は政治家に向かない」と進路を悩む時、札幌農学校官費生募集を知り、官費による学費支給が家計に負担をかけないという魅力も手伝って、即日父を説き伏せ、第2期生として北海道に渡ります。

 内村はこの札幌農学校でキリスト教と出合います。「少年よ大志を抱け」の言葉で有名な米国人教師クラークが第1期生を感化。クラークは帰国した後でしたが、第1期生から伝道されるのです。内村は抵抗しますが、「神は一(いち)なり」という思想に感銘を受け、入信するのです。

 彼は「札幌バンド」と呼ばれるクリスチャングループの中核を担い、礼拝などの集会を持ちます。札幌農学校を首席で卒業後、上京。農商務省の官吏となります。

 内村は24歳の時、浅田タケと結婚。しかし嫁姑問題も絡み、わずか7か月で離婚。この破局が内村に大きな打撃を与えます。神に対する自責の念に駆られるのです。

 深刻に悩む内村に、家族がアメリカ行きを勧め、彼は渡米。やがて養護施設に勤務し、慈善事業に身を投じる中で、修行僧のような生活をします。しかし心の平安が得られない彼は退職。クラークの母校アマスト大学に入学するのです。そこでシーリー総長を通じ転機を迎えます。自責の念にとらわれる内村に、総長は「己を省みることを止め、なぜ十字架のイエスを仰ぎ見ないのか。君のなすところ、子供が鉢に植えたる植木の成長を確かめようと毎日、根を抜いて見るに等しい。神にゆだね、その成長をなぜ待たないのか」と諭します。内村は神の恩寵に身をゆだねない自分の高慢を悟り、立ち直るのです。

「再臨は唯一の人類の希望」

 回心した内村は「日本のために働く」という使命感を与えられ、以後、彼の愛は「二つのJ」に向けられます。

 二つのJに心を注ぐ彼は、帰国後、横浜加寿子と結婚。第一高等中学校の教員となり、そこで「不敬事件」を引き起こします。始業式で教育勅語奉読式が挙行。「天皇の御親書に礼拝せよ」の命令に、彼はためらうのです。

 敬礼なら良いが、神以外に礼拝はできないという思いから、会釈で済ませたのでした。この行動が「非国民」との非難を受け、日本中どこに行っても安住の地がない期間を過ごすことになるのです。不運は重なり、内村はインフルエンザから肺炎を患い、生死の境をさまよい、その看病疲れから妻・加寿子が死去します。

 その苦境にあって、彼は「基督信徒の慰め」を出版。これらの苦難を、かえって「神の恵み」と受け止め、世の苦しむ者、悩む者に愛を注ぐことを決意するのです。

 彼は独立伝道者として活躍。「聖書之研究」を出版して多くの人々に感化を与えて、弟子を得ていくのです。

 内村は信仰40年目、再臨がなされる2年前の1918年に再臨運動を始めます。彼は言います。「生涯に3度の大変化があった。1、農学校で神を信じたこと。2、米国で十字架の恩寵に捕らえられたこと。3、再臨を確信するに至ったこと」と。彼は「人間の努力だけでは平和実現は難しい。キリストの再臨によってなされる神政こそが、唯一の人類の希望だ」と確信するに至ったのです。

 1920年、真のお父様がお生まれになりました。再臨主の到来を叫んだ彼は、預言者の使命を果たしたと言えます。彼の墓石には「われは日本のため、日本は世界のため、世界はキリストのため、そしてすべては神のため」という彼の言葉が記されています。内村のこの言葉は、真のお父様の思想に通じるのです。

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 次回は、「ウイリアム・ブース」をお届けします。