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勝共思想入門 8

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「勝共思想入門」を毎週木曜日配信(予定)でお届けします。
 同書は、40日研修教材シリーズの一つとして、1990年に発行されました。(一部、編集部が加筆・修正)

光言社・刊

第二章 人間はどうしたら幸福になることができるか

人間らしさを取り戻す方法

 ルソーとマルクスの考え方がもたらした影響は、それぞれ、フランス革命、共産主義革命として現実化したのですから、非常に大きかったといわなければなりません。人間が不幸であるのは社会環境による、という考え方が理論づけられた場合、人間の責任を他に転嫁しようとする心を大きく引き出すものであることの証明といえるでしょう。もちろん、この考え方は良いものではないし、苛責を感じる内容です。しかし、これがいったん正当化され、正義なんだとされたら大変な力を出すのです。

 共産主義思想はこの人間の心の中の不義な要素を結集させたといえるのです。

 ルソーとマルクスに共通するのは、共に社会に対する憎悪を激しく燃やした個人的経験があるということです。

 ルソーは生まれて間もなく母と死別し、10歳のときに父親はルソーを捨てました。こうしてルソーは天涯孤独となり、転々と職業を変えて青年時代を過ごしています。パリへ名声を求めて出たときも、ついにその野心を砕かれ失望と貧困のどん底の中であえいだのです。

 社会に対する徹底した憎しみを持ったのはこのころのことでした。社会の不正を暴露し、打倒し、新しい社会の実現を願うようになったのはこのような背景があったわけです。

 彼らにとっては、社会制度を変えることが人間の心を良くし、自由を実現し、人間が幸福になれる唯一の道だったのです。そして、それが人間の心の中の不義の要素を正当化しつつ結集させ、暴力的力へと爆発させたのです。

 結論に入りたいと思います。私たちの住んでいる現実は、常に人間と環境が相互に影響を与え合いながら存在しています。その具体的なかかわり合いの中で歴史は形成され、生きた自己自身が形成されてくるのです。

 しかし、この二つのうちいずれが根本的かといえば、人間の心のほうが環境より、根本的であるということです。あくまでも人間が主体、環境が対象であるということです。

 社会環境の変革は、人間の動機が正しいものでなければならないのです。正しい動機へと人間の心をむかわせる内的精神的変革があって初めて、外的社会環境を変革し得る資格があるともいえましょう。社会が変われば、人間の心は良くなるんだという考え方では決して理想は実現されないのです。新しい制度の中で、また新しい型の不正が、不平等が、不幸が生まれてくるのです。今の共産主義社会が、そのよい実例といえましょう。人間の心の在り方に対して、環境がすべてを支配しているという唯物論の考え方は、現実の人間の心の在り方を正しくとらえていない非現実的なものといえます。その意味で、彼らの楽観主義は観念的といえると思います。また、このことは、私たちの生活姿勢そのものをも、再検討すべき点を示唆してくれていると思うのです。

 正しい動機が正しい結果、現実を生み出すのです。

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 次回は、「宗教の発生とその役割について」をお届けします。

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