2022.10.13 22:00
勝共思想入門 7
アプリで読む光言社書籍シリーズとして「勝共思想入門」を毎週木曜日配信(予定)でお届けします。
同書は、40日研修教材シリーズの一つとして、1990年に発行されました。(一部、編集部が加筆・修正)
光言社・刊
第二章 人間はどうしたら幸福になることができるか
二 人間らしさの喪失
(二)マルクスの立場
マルクスの初期の考え方は、ルソーの考え方にその源流を見ることができるようです。マルクスも、国家が人間から人間らしさを奪ったとしています。彼の著した『ユダヤ人問題によせて』という著書がそれです。やはり、人間を腐敗させ、人間が不幸になったのは人間を取り巻く環境、国家のためであるというのです。
マルクスの場合、ルソーの総論的な考え方に比べて、より詳細に話を進めていくのです。ここで、人間が幸福な状態、人間が人間らしい状態(ルソーの場合、これを自然状態と呼んでいます。「自然に帰れ!」というルソーの言葉は有名です)をどのようにとらえているかを参考のために説明しておきます。ルソーは「自己維持の欲求」と「同情(憐みの心)」をもって、他人即自分というふうに同一視できる心で生活している状態といいます。マルクスの場合は、そのような生活の基になる状態として「自由な、創造的な活動としての労働」をしている状態、労働することがそのまま喜びとなる状態をいっています。経済的内容をより根本としたものです。いずれも自由の実現という点に考え方の根本をおいています。
マルクスは資本主義社会が人間から人間らしさを奪ってしまう社会であるという根本的な理由を私有財産制度に見ます。ルソーもそのようにいっているのですが、マルクスはさらに深めています。つまり資本家が、私有財産制度にのっとり、商品生産に必要なすべての生産手段をもつようになる。生産手段というのは、原料・工場・機械・土地などをいうのですが、それゆえ、生産手段をもたない労働者は資本家に雇われる以外生活する方法がないので、資本家との契約を結んでその工場で働くようになる。そこから、労働者は自分の造り出したものは自分のものとはならず、資本家のための労働となり、労働それ自体が喜びでなくなり、自分の意志どおりに働くことはできなくなる。結果として労働者は人間らしさを失い、また、“働かせて”いる資本家もまた、人間らしさを失っている。
つまり、資本家と労働者からなる資本主義社会においては、すべての人間が人間らしさを失ってしまうというわけです。こうして、社会の経済の仕組みが、人間から人間らしさを奪い取ることになるというのです。
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次回は、「人間らしさを取り戻す方法」をお届けします。
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