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勝共思想入門 6

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「勝共思想入門」を毎週木曜日配信(予定)でお届けします。
 同書は、40日研修教材シリーズの一つとして、1990年に発行されました。(一部、編集部が加筆・修正)

光言社・刊

第二章 人間はどうしたら幸福になることができるか

人間らしさの喪失

 環境が人間に与える影響、それも良い意味でなく、悪い意味においての影響を、思想的に位置づけた人についてこれから説明してみたいと思います。代表的先駆者となった二人の思想家を挙げてみましょう。皆さんもよく知っているルソーとマルクスです。

(一)ルソーの立場
 まずルソーという人について思い浮かぶのは、彼は啓蒙思想家の代表的人物だということです。しかし、ルソーの場合、他の啓蒙思想家とは違っていたのです。それは、文明の発展、学問や芸術の発展が人間の精神に与えたものは、精神の純化ではなく腐敗と堕落であったと考えた点です。

 啓蒙思想といいますと、歴史を人間の理性の進歩、人間性の進歩ととらえる見方をもっているのですが、ルソーの場合は、その逆と見たのです。当時の人々に与えた衝撃は非常に大きいものがありました。いわば、文明、すなわち社会環境が人間を悪くしたのだというのですから、この面のみを見れば、今の共産主義的な社会に対する見方と非常によく似ているといえるのです。というよりも、マルクスがルソーの考え方に大きく感化されているといったほうがよいのかもしれません。ルソーの有名な代表作の一つ『人間不平等起源論』(1755年)から少し説明しましょう。

 「ある土地を囲いこんで『これは俺のものだ』と宣言することを思いつき、それをそのまま信じるような単純な人間を見い出した者、彼こそ文明社会の真の創始者であった」。このようにして、私有財産が始まり、財産の不平等が始まったとしています。「冶金と農業とがこの大革命を促した二つの技術であった」というのです。ところが、この不平等から恐るべき戦争状態が生まれるようになり、富者は一つの妙案を考えついた。それが国家であるというのです。国家の力による平和と調和の維持の名目のもとで、法律を制定し、貧者に新しい足かせ、富者に新しい力を与えるようになったというのです。このような観点はそのまま共産主義者に受け継がれているといってよいでしょう。こうして国家は不平等の永久化をもたらし、環境が人間から人間らしさを奪ったとするのです。

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 次回は、「人間らしさの喪失-マルクスの立場」をお届けします。

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