2022.10.11 12:00
平和の大道 2
高規格道路は平和のインフラ
平和のインフラ・ローマ街道①
皆さんは、『平和の大道』という書籍をご存じでしょうか。著者は、一般財団法人国際ハイウェイ財団の理事長、佐藤博文氏です。
同書は、国際ハイウェイ財団が推進する「国際ハイウェイ・日韓トンネル」プロジェクトの意義や背景などについて総合的に理解することのできる貴重な一冊です。
同プロジェクトの提唱者である文鮮明(ムン・ソンミョン)・韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁夫妻の世界平和ビジョンを知る上でも欠かせない論文となっています。
なお、同書は主に『友情新聞』(2011年6月号から2017年5・6月合併号)に連載された記事をもとに構成されています。
Blessed Lifeではその一部を抜粋して紹介してまいります。ぜひお楽しみに!
佐藤 博文・著
平和のインフラ・ローマ街道①
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」(ドイツの宰相、ビスマルクの言葉)という格言があるが、世界平和実現という歴史的な難問題を解決しようとすれば、まず歴史の中からその可能性を謙虚に学び取ろうとする賢者の道を選択する必要がある。
なぜなら正しくて現実的な構想や戦略は、机上の理論や学説からでなく、歴史の中にあるモデルや教訓を探していく過程の中からしか生まれないと考えるからである。それゆえ、もし世界平和実現のモデルとなるものが世界の歴史の中に実在すれば、完全なものでないとしても、それを参考にして平和実現の具体的な構想や戦略を構築するのが賢明な道であると言える。
世界史を俯瞰(ふかん)してみれば、「パクス・ロマーナ」(ローマの平和)という史上空前の平和と繁栄の時代が、約2000年前におよそ200年にわたって地中海を囲む広大な領域で現実に存在していた。広大な領域を統一した国家体制下で、多人種、多民族、多宗教、多文化共存の平和と繁栄の時代が長期間にわたって実現したのは世界史上、ローマ帝国以外には見当たらないと言っても良い。
その平和と繁栄に決定的な役割を果たしたのが「すべての道はローマに通ず」と言われるあの「ローマ街道」である。古代ローマは、今で言う「高速道路」に該当し、当時としては既存の道路の概念を根本的に変えた高規格の道路網としての「ローマ街道」を帝国全土に張り巡らすことによって、北はブリテン島(今のイギリス)から西はイベリア半島、東は小アジア・メソポタミア地方、南は北アフリカにわたる広大な領域で、当時の「世界」とも言うべき地中海世界において、平和と繁栄を達成したのである。
紀元前3世紀、同じ時期に、東洋では人と物の交流を妨げる城壁(万里の長城)を造り始めた。一方、西洋では、ローマ人が人と物の交流を促進する道路網(ローマ街道)を全国土に張り巡らし始めた。その後、後者は版図を拡大しローマ帝国を築き上げ、平和と繁栄を実現し、地中海を取り囲む一大文明圏をも構築するようになったのである。
これは「高規格道路の広域的なネットワークの構築」によって、「平和のインフラ」が整備されていけば、現実的に「平和」が実現され得るという歴史的な実例である。国際ハイウェイを建設することによって「世界平和」を実際に実現しようとする際に、歴史上実在した「ローマ街道」から多くの生きた教訓を学ぶことができるということを意味している。
ローマ街道については、『ローマ人の物語』(塩野七生著、新潮文庫)を参照にした。今の日本でもよく「インフラストラクチャー」(社会資本、下部構造、略称インフラ)という言葉が使われるが、実は「インフラ」の起源はローマにある。古代ローマ人は「インフラの父」と言われるだけに、「インフラとは人間が人間らしい生活を送るのに必要な大事業」と考え、国家や地方自治体の当然の責務としてそれを営々となしてきたのである。
インフラには、ハードとソフトがある。街道、水道、港湾、公衆浴場、公会堂、劇場、競技場等がハードのインフラであり、法律、安全保障、郵便制度、通貨制度、税制、教育、医療等がソフトのインフラである。
平和というものは、政治、経済、文化、宗教等の総合された働きによって現実の諸問題が解決された基盤の上で、その結果として実現されるものであるため、本来はこれらすべてのインフラについて記述しないとローマの平和について正しく論ずることにならないが、ここではハードのインフラの代表としての「ローマ街道」に焦点を絞り、建設の目的や経緯、道路としての内容や機能、波及的な効果、特に、安全保障という軍事的な機能を超えた経済や文化の発展や平和構築に対する現実的な効果について論ずることにする。
(『友情新聞』2011年7月1日号より)
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次回は、「平和のインフラ・ローマ街道②」をお届けします。
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