2022.10.04 12:00
世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
ロシアが4州を「強制併合」へ
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
今回は、9月26日から10月2日までを振り返ります。
この間、以下のような出来事がありました。
中国と北朝鮮を結ぶ列車 5カ月ぶりに再開(26日)。トランプ氏、安倍氏追悼の声明(27日)。ハリス米副大統領、南北非武装地帯訪問へ(29日)。日中両国、国交正常化50周年記念日(29日)。プーチン大統領、東・南部4州の併合を宣言(30日)。米「太平洋島しょ国戦略」を公表(30日)。ウクライナ軍、ヘルソン州の2集落奪還を公表(10月2日)、などです。
プーチン大統領は9月30日、軍事侵攻によって占領したウクライナ東部と南部の4州(ルハンスク州人口約210万人、ドネツク州約406万、ザポリージャ州約164万、へルソン州約100万)を自国に併合すると一方的に宣言し、併合文書に署名しました。言語道断の暴挙です。
プーチン氏は、強行実施したロシアへの編入を求める住民投票(23~27日)が成立したことを強調し、「賛成票は87~99%」であったと公表しました。
ロシアがウクライナの領土を一方的に併合するのは2014年のクリミア半島併合以来となり、これをもってウクライナ全土の20%を自国領土と見なすことになります。
グテーレス国連事務総長は29日、「国家が武力による威嚇、または武力行使により他国の領土を併合することは、国連憲章の原則及び国際法違反だ」と厳しく批判していました。そしてG7(先進7カ国)は10月1日未明、外相声明で併合を強く非難。「さらなる経済制裁を科す」としています。
ロシア政府は、今後ウクライナ軍が領土奪還を試みれば「ロシア本土への攻撃」と主張し、核兵器使用も示唆する威嚇を行いました。
一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は声明を公表し、対抗措置として北大西洋条約機構(NATO)に早期加盟を申請することを明らかにしており、さらにプーチン氏を交渉相手にはしない意向を明らかにしたのです。状況は一層混迷の様相を呈しています。
ロシアの戦争目的が「併合宣言」で大きく変わったといえます。
プーチン氏は侵攻を始めた今年2月、東部のドネツク、ルハンスク両州の住民を「集団殺害(ジェノサイド)から守る」などと述べ、「われわれの計画にウクライナ占領は含まれない」と断言していたのです。
当初の目的は、親露派支配地域の「独立」を承認して東部支配を固め、さらに首都キーウに傀儡(かいらい)政権を樹立してウクライナを欧米との緩衝地帯とする狙いだったと思われます。
しかし、苦戦が明らかな状況となり、国民の支持をつなぎとめる「戦果」の演出が不可欠となって今回の併合宣言となったのです。「占領はしない」と言った当初の建前は捨てざるを得なくなったと言えるのです。
ロシア軍は今、4州全土を支配できているわけではありません。当面は4州の完全制圧が侵攻の目的となるでしょうが、それも困難となる可能性があるのです。というのも、併合宣言に踏み切っても、国民の熱気は程遠いのです。
プーチン大統領が住民投票と同時に打ち出した「部分的動員」(9月21日)が、混乱を引き起こしています。
各地で動員反対の街頭デモが行われ、拘束者は約2000人を超えました。さらに外国に逃亡する人も急増しています。ノルマ達成を焦った地方機関が、高齢者など、本来対象外の国民まで招集しているのです。
ロシアの独立系世論調査機関「レバダセンター」が29日に公開した調査によれば、「部分的動員令」についての質問に、回答者の83%が「恐怖」「ショック」「怒り」を感じたと答え、「ロシアへの誇り」としたのは23%にとどまりました。そして、侵攻開始から高まったプーチン氏の支持率は3月以来、初めて80%を割り、77%となっています。プーチン氏の計算が狂い始めており、今後予想外の事態に暗転する可能性があるのです。
連携する中国の動きとともに、日本の安全保障にとって重大な事態へと連動する可能性もあり、一層の警戒が必要となっています。
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