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愛の勝利者ヤコブ 2

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「愛の勝利者ヤコブ」を毎週月曜日配信(予定)でお届けします。
 どの聖書物語作者も解明し得なかったヤコブの生涯が、著者の豊かな聖書知識と想像力で、現代にも通じる人生の勝利パターンとしてリアルに再現されました。(一部、編集部が加筆・修正)

野村 健二・著

(光言社・刊『愛の勝利者ヤコブ-神の祝福と約束の成就-』より)

イスラエル民族の起こり①

 二つの国民があなたの胎内にあり、
 二つの民があなたの腹から別れて出る。
 一つの民は他の民よりも強く、
 兄は弟に仕えるであろう。
(創世記2523


 聖書は元来、イスラエル民族(ユダヤ民族)への神からの啓示を編集して集大成したものであった。このイスラエル民族と神(ヤハウェ)との契約によって、救世主、生ける神の子として女の腹から肉体をもって地上に送られたイエス・キリストは十字架上で代贖(身代わりの死)し、復活した。

 そのイエスを主とし、神のみ手によるそのよみがえりを信ずる(ローマ109他)パウロ、ヨハネらの使徒を先頭とする信徒たちが、死をも恐れぬ熱烈な布教により、世界帝国ローマを精神的に屈伏させた。それがキリスト教という新しい名のもとに、世界のすみずみにまで及ぶ世界最大の宗教にまで発展したのである。「キリスト教」とは、当初は、キリストを信ずる一群の信仰者に対してほかの者たちのつけたあだ名であった。

 この「イスラエル」というのは「勝利者」という意味のヘブライ語である。もとはといえば、アブラハムの孫で、イサクの子、ヤコブが天使との組み打ちに勝って与えられた称号である。ヤコブは、もものつがいがはずれるという重傷を負いながらなお勝負をあきらめず、天使のほうが根負けした。

 天使が「夜が明けるからわたしを去らせてください」と懇願するのに対して、ヤコブは「わたしを祝福してくださらないなら、あなたを去らせません」とねばり抜いた。そして、とうとう「あなたはもはや名をヤコブと言わず、イスラエルと言いなさい。あなたは神と人とに、力を争って勝ったからです」(創世記322229)と言わせた。そこから、このヤコブならびにその子孫のことを「イスラエル」と呼ぶようになったと聖書には記されている。

 イスラエル民族は「アブラハムの子」(マタイ39など)だという表現もよく使われるが、そのようにいえば、アラブ民族もわれわれもやはり「アブラハムの子」でイスラエルだけの独占物ではないと抗議するに相違ない。なぜならアブラハムの正妻サラ(もとはサライといった)は産まず女だったので、サラの心遣いでそのつかえめハガルをいま一人の妻として迎え、一子イシマエルをもうけた。そのイシマエルがアラブ民族の祖だと言い伝えられているからである。

 ハガルはアブラハムの子をはらむと、その子があと継ぎになることは明らかなので、次第に女主人のサラを見下すようになる。その様子にサラは腹を立て、以後二人の間は険悪となった(創世記16章)。

 その後、アブラハムが99歳の時に、それまで子のなかったサラが身ごもって男の子を生むという啓示があった。アブラハムもサラも笑ってそれを信じなかったが、やがてその啓示のとおりに、アブラハムがちょうど100歳となったとき、一人の男の子を生み落とした。それがイサク(創世記171519189152117)であって、そのイサクの子孫のうちからイスラエル民族が生まれてきたといわれる。

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 次回は、「イスラエル民族の起こり②」をお届けします。