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愛の勝利者ヤコブ 3

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「愛の勝利者ヤコブ」を毎週月曜日配信(予定)でお届けします。
 どの聖書物語作者も解明し得なかったヤコブの生涯が、著者の豊かな聖書知識と想像力で、現代にも通じる人生の勝利パターンとしてリアルに再現されました。(一部、編集部が加筆・修正)

野村 健二・著

(光言社・刊『愛の勝利者ヤコブ-神の祝福と約束の成就-』より)

イスラエル民族の起こり②

 サラとハガルの間の対立感情は、新たに正式の世継ぎとされたイサクの誕生によって頂点に達した。神はイサクをアブラハムの嫡流(ちゃくりゅう)とする代わりに、ハガルの子イシマエルもアブラハムの子ゆえ、これをも一つの国民とすると誓われたのである。アブラハムはハガルにパンと水の皮袋を与えて肩に背負わせ、荒野で別に暮らすように諭して、そこを出て行かせた(創世記21821)。その子孫がアラブ民族で、この時の対立感情が根となって、いまだにイスラエルとアラブ民族とは犬猿の仲だというのだから、それが本当だとしたら、人間の執念深さには驚くほかはない。

 では、そのイサクの子がすべてイスラエル民族なのかというと、そうではない。冒頭の聖句(創世記2523/前号掲載)──これはイサクの妻リベカに神が与えられた啓示であると聖書に記されている──にも暗示されているように、リベカが産んだ双生児(ふたご)のうちあとから生まれてきたほう、すなわち弟であるヤコブから起こった「民」──それだけに、神がヤコブに与えた前記のイスラエルという名称が付せられているのである。

 ちなみに「ユダヤ」というもう一つの名称のほうは、ヤコブの12人の子供から興ったといわれるイスラエル十二氏族で築いた統一王国が、ソロモンの死後、南北に分裂し、ユダとベニヤミンの二氏族のみがソロモンの正統を継いで南王国を建て、自ら「ユダ」と名乗ったことに由来するものである。

 その関係を分かりやすく図解すると、次のようになる。

 このように、ヤコブに至ってはじめてその子孫のみに「選民」としての祝福が与えられているのである。そのため創造主ヤハウェも、聖書においては、単に「アブラハムの神」とは呼ばず、「アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神」(出エジプト記36)とわざわざ三代並べて記されているのである。

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 次回は、「イスラエル民族の起こり③」をお届けします。