2022.09.22 22:00
勝共思想入門 4
アプリで読む光言社書籍シリーズとして「勝共思想入門」を毎週木曜日配信(予定)でお届けします。
同書は、40日研修教材シリーズの一つとして、1990年に発行されました。(一部、編集部が加筆・修正)
光言社・刊
第二章 人間はどうしたら幸福になることができるか
一 人間と環境
長い人間の歴史の中で、いろいろな人が生まれては死に、様々な足跡を残していきました。そこには、人間・自然・宇宙・神等についての多種多様な考え方、とらえ方が出てきては消えていったのです。しかし、だれも認めざるを得ないことは、多種多様な考え方にも共通なことがありました。それは「だれでもみな幸福を求めている」ということです。
どうすれば人間は幸福になることができるのだろうか、というこの大問題についての考え方に、二つの道が示されてきました。このことについて、まず述べてみたいと思います。
(一)精神主義的立場
まず一つに、人間が幸福になれないのは人間の心の問題なのであって、人間の心さえ正しくなれば幸福になることはできるのだというものです。いわば、精神主義とでもいえるものです。人間が悪いのはその心のもち方によるものである。人間は精神の自由をもっているのだから、心がけ次第でよくなろうとすれば、いくらでもよくなることができるのだ、社会は、このような人間一人一人の集まりなのだから、すべての人が心のもち方を正して修行して善良な人間になりさえすれば、この世の中はいくらでも住みよいものになり、私たちは幸福になることができるのだ、とする考え方です。
人間の歴史の中では、こうした心の在り方が社会を変えていくのだという考え方のほうが、長い間認められてきたといえるでしょう。
人間の心に大きな変化を与え、それが社会の在り方まで変えた歴史上の事実、例えば、迫害の中でもローマの国教となるまでに拡大していったキリスト教の力、初期の仏教に帰依したインドマウリア王国のアショーカ王による政治改革等を挙げてみますと、その根本的力は宗教によるものであることが分かります。単なる一人の人間の考え方が、これほどまでに人間の心を変え、さらに、社会制度の在り方までに影響を与えたということはないといえましょう。偉大な宗教のすべて(仏教・キリスト教・儒教など)が環境よりも人間の精神の在り方を第一とする精神主義的立場は、西洋より東洋において特に強調されてきたといってよいと思います。
例えば、一生懸命、集中して勉強しようとする、しかし、外の自動車の通る音や、隣りの家のテレビや、ステレオの音がうるさくてどうしようもない。そこで、窓を閉めて、耳栓をして、心を統一しようとする。しかしうまくいかない。
西洋の場合、すぐ現実的に対応して、家の構造を変えて外の騒音を防止できるようにしたり、法律によってお互いに他人の迷惑にならないように環境そのものを住み良くするよう造り変えることをまず考えるでしょう。ところが東洋の場合はそのような方向をとる代わりに、自己という精神的主体の在り方に注意を集中して、そんなことで自分の心がかき乱されるのはまだ心の修養が足りないからだというように考える傾向が強いのです。外の環境のここが悪い、あそこが悪いなどといっていては、人間の真の心の平和は実現されない、主体の変革こそが人生最高の課題であり、これによる解決が、あらゆる問題の解決の根本的な在り方であるというのです。
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次回は、「人間と環境-唯物論的立場」をお届けします。
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