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コラム・週刊Blessed Life 233
ウクライナ戦争の行方と米国の戦略

新海 一朗

 現在、気になることと言えば、安倍晋三元首相の「国葬」が安全に実施されるかということです。
 その一方で、連日報じられるウクライナ戦争の戦況報道を見て憂慮するのは、この戦争は一体いつまで続くのか、いつ終わるのかという戦争終結の見通しについてです。

 互いに消耗戦になっていることは確かです。このままではロシアの勝利も、ウクライナの勝利も宣言するのは難しく、それ故、停戦交渉でこの戦いを終えることにするという流れも考えられます。

 しかしプーチンとゼレンスキーがすんなりと交渉を始めることができるのか。それぞれ、有利な条件が整ったタイミングを見て交渉の段取りとなれば、それほど簡単ではありません。
 従って、現在のところ、先の読めない状況にあるというしかなく、戦争の終わらせ方がいかに難しいかということです。

 2021123日、ウクライナ戦争が始まりそうだと、ワシントンポスト紙が大々的に報じました。
 年が明けて、2022224日にロシアのウクライナへの侵攻が現実のものとなります。

 核保有の軍事大国ロシアが核を放棄したウクライナへ攻め入るなど、そんな「弱い者いじめ」がどこにあるかという不条理な侵攻への非難が世界に広がりました。

 軍事大国ロシアがウクライナの首都キーウを数日で陥落させ、全土を掌握するという当初のシナリオが崩れた時、そこからロシアは悪夢に襲われたような軍事作戦を遂行し、勝ち目があるのかないのか、さっぱり分からない状態に陥ったと言えます。

 武器もウクライナ軍の攻撃で破壊され、損耗を起こし、不足していく一方です。
 最近は、北朝鮮から砲弾やロケット弾を何百発も購入し、イランからはイラン製ドローンを購入していることなどを、米国の情報機関が伝えています。
 中国は世界からの経済制裁が怖くて、兵器供与はせず、ちゃっかりと石油などを安値で買いたたいています。

 ロシアは兵士の確保にも相当苦労しているようです。当初描いた大国の一方的な勝利はどこへ行ったのか、という状況です。
 それでも、ロシアは負け戦のイメージで戦争を終わらせるわけにはいかず、停戦をどう演出するか苦慮しているところでしょう。

 米国がどう考えているかと言えば、「オフショアバランシング」戦略で世界の問題に関与することを基本にしています。

 「オフショアバランシング」はシカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授、ハーバード大学のスティ-ブン・ウォルト教授が主導する戦略で、ある一定の地域でその地域を支配する覇権国(中国やロシア)が現れたとき、その覇権国の動きを阻止する試みの矢面に米国は立つべきでなく、覇権国の出現を阻止することに大きな動機・関わりを持っている地域諸国(日本や台湾、EU〈欧州連合〉、ウクライナなど)に防衛上の重責を担わせるという戦略です。

 すなわち、一定の距離を保って(沖合いにとどまって)、覇権国とそれに対抗する地域諸国の戦いぶりを見守り、簡単に手を出さないという考えです。
 こういう戦略に立っているとすれば、ウクライナへの米国の直接的干渉がロシアとの一騎打ちになるのは絶対に避けたいというのが米国の考えになります。

 ウクライナが自前で一生懸命に戦っている姿を見守り、形勢に不利が生じたら、背後から支援体制を取るというやり方です。
 米国の姿勢がこうであれば、ウクライナ戦争は一進一退、膠着(こうちゃく)状態になるのは必然で、戦争疲弊で両国とも弱体化の一途をたどります。
 むしろ、米国はそうなることを望んでいるというのでしょうか(戦争による軍需の増大、経済の収益と回復=戦争景気)。

 米国が立ち上がるタイミングが見えません。この秋、10月も11月もまだまだ、国際情勢はひと波乱、ふた波乱、何が起きるのか、残念ながら、五里霧中という状況にあります。