https://www.kogensha.jp

この人は神の子だった

(光言社『FAX-NEWS』通巻880号[2004年3月15日号]「四大聖人物語」より)

 『FAX-NEWS』で連載した「四大聖人物語」を毎週月曜日配信(予定)でお届けします。(一部、編集部が加筆・修正)

▲山上の垂訓(ウィキペディアより)

 イエスが十字架につけられたまま、長い時間が流れました。突然、正午だというのにあたりが暗くなって3時間が過ぎました。

 神の子の死に、天は悲しみ、地は慟哭(どうこく)したのでしょう。そのとき、神殿内の聖所と至聖所を隔てる幕が上から二つに裂けました。

 「父よ、私の霊をみ手に委ねます」。振り絞るようなイエスの最期の言葉でした。

 イエスの処刑に携わったローマの兵士を束ねる百卒長がこの有様を見て言いました。

 「まことにこの人は神の子だった」

 処刑を見に集まっていた人々も、後味の悪さに胸をたたきながら帰っていきました。

 遠くの方に、イエスに仕えてガリラヤから従ってきた人々の姿が見えます。その中にはマグダラのマリアもいました。

 夕方になって、イエスの弟子でアリマタヤの金持ち、ヨセフがピラトの所に行って、イエスの遺体を引き取りたいと申し出て、許されました。

 ヨセフはイエスの遺体を十字架から降ろして、きれいな亜麻布で包み、岩をくり抜いて作った新しい墓に納め、入口を大きな岩で塞ぎました。

 ガリラヤから従った女たちは、イエスの埋葬を見届けました。

 翌日は安息日でした。安息日のそのまた翌日、朝早くにマグダラのマリアたちは遺体に香料を塗るために墓にやってきました。

 大きな岩が転がされ、入口が開いています。恐る恐る中に入っていくと、あるはずの遺体がありません。女たちは怖くなってわっと逃げ出しました。

---

 次回は、「私は常にあなたと共にいる」をお届けします。