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「性解放理論」を超えて(47)
ジャック・デリダ③~差異(ズレ)

 「統一思想」すなわち「神主義」「頭翼思想」によって生きるのか、神の言(ことば)を否定する思想を選択するのか…。
 『「性解放理論」を超えて』を毎週月曜日(予定)にお届けします。

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大谷明史・著

(光言社・刊『「性解放理論」を超えて』より)

五 ポスト構造主義を超えて
(三)ジャック・デリダ

(3)差異(ズレ)
 デリダによれば、これまでの哲学は誤っている、永遠の真理などというものはない、言語のうちに見いだされるのは、「ズレ」や「差異」のシステムだけである、と言うのです。ポール・ストラザーンによれば、

 これまでの哲学は誤っている。「事物の本質」に含まれている永遠の真理などというものを求めてきたのは間違いだ。そのような代物ではなく、自らが使う言語にこそ、目を向けねばならない。
 ではデリダの考えでは、言語とはどのようなものなのだろうか。言語は対象との本質的な関係など持ち合わせていない。自分自身によって示される概念とも本質的な関係を持ち合わせていない。
 言葉の意味はそのような関係から出てくるのではない。言語のうちに見出されるのは、「ズレ」や「差異」のシステムだけである。言葉の意味はこの「差異」から生まれてくるにすぎない(※48)。

 デリダはさらに、差異だけが存在するのであって、「自分自身であり続ける」ような「肯定的な言葉」などあり得ないと言います。言語は常に途方もない流動性のなかにあると言うのです。

 デリダの見解によれば、「意思の疎通には必ずズレがついて回るものであり、……[言葉の意味は]、最初の意味から絶えず変化してゆき、意味が完全にわかったという感覚はつねに先送りされていくもので、絶え間なく変化してゆくプロセスだとみるべきなのです(※49)」。

 デリダによれば、差異だけが存在するのであって、「自分自身であり続ける」(アイデンティティ)という性質を持つ「肯定的な言葉」など全くないと言うのです。しかし、ポール・ストラザーンが言うように、「もし同一的なもの、つまりアイデンティティがなければ、概念も存在しない。様々なものをまとめ同一化する概念など、全く考えられ得なくなる(※50)」のです。

 言葉の意味は「差異」から生まれてくると言いますが、言葉の意味は「差異」から生まれてくるのではありません。言葉の意味は「差異」でなく、主体と対象の相対関係を通じて現れるのです。「統一思想」の表現で言えば、目的を中心とした、概念と概念、命題と命題の照合(授受作用)を通じて、意味が表現されるのです。

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※4ポール・ストラザーン『90分でわかるデリダ』(33
49 スチュアート・シム『デリダと歴史の終わり』(38
50 ポール・ストラザーン『90分でわかるデリダ』(51

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 次回は、「ジャック・デリダ④~差延」をお届けします。


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