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胸をかきむしるペテロ

(光言社『FAX-NEWS』通巻854号[2003年11月25日号]「四大聖人物語」より)

 『FAX-NEWS』で連載した「四大聖人物語」を毎週月曜日配信(予定)でお届けします。(一部、編集部が加筆・修正)

▲山上の垂訓(ウィキペディアより)

 ペテロはカヤパの家の中庭に入り込み、人々に紛れて座っているところを、女中の一人が「あんたはイエスと一緒にいた」と指さしました。

 ペテロはあわてて、「何を言うんだ」。

 立ち去ろうとするペテロに別の女中がまた、「イエスの仲間の一人だ」と言いました。

 「神に誓ってそんな人は知らない」、首を横に振ります。

 人々が近寄ってきて「いや、イエスの仲間だ。方言が同じだ」。

 ペテロは凍りついたようになって、「皆の言っている意味が分からない」と懸命に否定します。

 そのときです。鶏が鳴いたのは。

 「あっ、イエス様の言われたのはこのことだ」。ペテロは外へ飛び出して大きな声を上げて泣きました。

 ――共に死ななければならなくなったとしても、師を知らぬなどとは申しませんと、自分は言ったではないか――

 激しい自責の念がわきます。頭を抱え、胸をかきむしりながら、ペテロはイエスに背を向け去っていきました。

 生きる価値がない、彼はこれほど己の罪深さを知ったことはなかったのです。

 捕らわれのイエスを、大祭司カヤパは死刑に処すため、ローマから来た総督ピラトの元に送ります。それは、ユダヤ人には死刑を宣告する権限がなかったからです。

 そのとき、イエスを売ったユダは、イエスが死刑になりそうなのを知りました。

 「何ということをしてしまったのか」。後悔の絶頂にありました。

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 次回は、「ユダ、罪を悔いて自殺」をお届けします。