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接吻の相手がイエスだ

(光言社『FAX-NEWS』通巻850号[2003年11月7日号]「四大聖人物語」より)

 『FAX-NEWS』で連載した「四大聖人物語」を毎週月曜日配信(予定)でお届けします。(一部、編集部が加筆・修正)

▲山上の垂訓(ウィキペディアより)

 イエスと弟子たちはゲッセマネに行きました。オリーブの林があってイエスたちがよく祈祷した所です。

 イエスはペテロ、ヤコブ、ヨハネを連れて、少し離れた場所で祈っています。

 ――父よ、み心なら、この苦い杯を遠ざけてください。ただ私の願いを聞いてほしいと申し上げているのではありません。み心にかなうなら、そうなさってくださいと申し上げているのです――

 イエスが祈っている間、近くで祈っているはずの三人の弟子は誘惑に負けて、眠り込んでいました。

 イエスはたしなめて言います。

 「ひとときでも私と一緒に目を覚ましていることができないのか」

 同じ事が三度ありました。イエスの一つの基台が崩れたことを意味します。

 イエスをとらえるため祭司長や長老たちが送った兵士などが、たいまつをかざし、剣と棒を持って近づいてきました。先頭にいるのはイエスを売ったユダです。イエスは逃げも隠れもしません。

 「私が接吻(せっぷん)する相手がイエスだ。つかまえて、引っ張っていけ」。ユダはあらかじめ合図を決めておきました。

 ユダはイエスのすぐ近くまで来て、「先生、いかがですか」と言って接吻しました。

 兵士たちはイエスに手をかけ、ひもでしばりました。

 「強盗に向かうように、剣や棒を持って私をとらえにきたのか。神殿で教えていたときはこんなことはしなかった」。イエスは悲憤を感じます。

 弟子たちはこのとき、イエスを見捨てて逃げていきました。自分も同じ目に遭うのではないかと怖かったのです。誰もイエスをかばおうとも、行動を共にしようともしません。

 イエスは前大祭司アンナスの家に連れていかれ、アンナスは、イエスを死刑にできる証言を集めるため、その時期の大祭司カヤパの元へイエスを送ります。

 弟子のペテロは成り行きを見届けようと、距離を置いてイエスを引き立てる人々の後についていきました。

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 次回は、「胸をかきむしるペテロ」をお届けします。