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エルサレムへ死の道行く

(光言社『FAX-NEWS』通巻828号[2003年8月13日号]「四大聖人物語」より)

 『FAX-NEWS』で連載した「四大聖人物語」を毎週月曜日配信(予定)でお届けします。(一部、編集部が加筆・修正)

▲山上の垂訓(ウィキペディアより)

 周りに集まるのは貧しい人々ばかり。イエスは思いました。「結局は都エルサレムに行かねばならない」。

 イエス一行が北方に行けば、伝道の成果を得られたでしょう。しかし、神の国を建てるという目的がある限り、辺境の地で伝道しても意味がありません。

 イエスは最も苦難の多いエルサレムへ転じます。エルサレムへ向かう道、それは死への道かもしれません。

 イエスには分かっていたのです。エルサレムに行けば、パリサイ派やサドカイ派の長老や大祭司、律法学者たちから反対され、命を狙われると。

 それを弟子たちに告げると、ペテロはイエスをわきに引き寄せ、「とんでもないことを言わないでください。そんなことがあるはずがありません」。

 ユダヤの教えからすれば、キリストたる者がそのような目に遭うことなどないというのです。

 すぐ側にいたペテロにしてこの程度の理解しかない。「引っ込んでいよ、サタン…」。イエスの厳しい言葉でした。

 当時、パリサイ派、サドカイ派という宗派の人々がユダヤの社会の指導者でした。あらゆる祈願、礼拝の儀礼は彼らを通して行われましたし、民衆に律法を守らせる役を担っていたのです。

 イエスは「律法を行わぬ者、信じぬ者へも神の愛は平等であり、救いも平等である」と人々に教えました。

 「善行を行うのに安息日も何もない」と、律法にある安息日の規則を守らないこともありました。

 パリサイ派やサドカイ派の人々、エルサレムの指導者は、今までのユダヤの社会にない教えに反発します。

 その彼らに送ったイエスの言葉は痛烈です。指さして「あなたがたは、災いをもたらす者だ」というのです。

 「天国を閉ざして、人を入らせない」「見栄のため長い祈りをする」「盲目の案内者」「内側は、不潔なものでいっぱいだ」――これが、イエスが彼らに放った言葉でした。

 彼らはイエスについて策をめぐらします。「この男は社会の敵だ。社会の秩序を破壊してしまうかもしれない。抹殺してしまおう」と。

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 次回は、「宮から商売人を追い払う」をお届けします。