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通いはじめる親子の心 13
共感的聞き方

 本書に出合った時からが子育ての新しい出発です。もう一度皆さまにぜひ読んでいただきたい、編集部イチオシ!なコンテンツをご紹介。
 「通いはじめる親子の心」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。

多田 聰夫・著

(光言社・刊『通いはじめる親子の心〜子供の気持ちに「共感」する』より)

第三章 子供の気持ちに「共感」する

共感的聞き方

 「自立の心」、「思いやりの心」、「感謝の心」が子供に育つためには、子供が自分の問題を自分で解決できるようになる必要があります。親は子供に、自分で解決しやすい環境を整えることが必要です。この環境を整えるのが、子供の気持ちを共感してあげることなのです。

 そのためには子供がどんな気持ちでいるのか、何を考えているのかをよく聞いてあげることが必要です。親は子供の話を聞くと、すぐに言いたくなるものです。「ああ、それはね……」と。それだけでなく、「この間も言ったじゃないの」、「そんなことでぐちぐち言って、男らしくない」。そうなると、子供はもう話したくなくなってしまうのです。

 言いたくなる気持ちを抑えることが大事です。親、特に母親はまず黙ることです。そのためには、親としては決意、覚悟が必要です。子供が相談してくるような親になるのです。そうなるためには、親が成長することが必要であり、そのための訓練も必要なのです。

 子供の気持ちを共感してあげると、子供は自分で問題を解決していくようになるのです。子供自身に、問題を解決する能力があるのです。それを信じてあげ、自分で解決しようとするまで、忍耐強く待つ必要があるのです。

 ここで、「共感的聞き方」の例を『10代の子どもの心のコーチング』(菅原裕子著、PHP研究所)から紹介します。

 「私には高校生の息子が一人います。……

 それまでの私は、息子に対し、話すことと言えば指示・命令・説教ばかりであったことに気づきました。この子はどうしてこうなんだろうと、息子を責めることばかりだったと思います。……

 ただ黙っているだけだから簡単だろうと思っていましたが、『黙る』というのはなんて難しいことか……。今まで黙って私の指示や命令を聞いていた息子はエライ!!……

 そして黙り始めて一週間。黙って話を聞く私に対して、『調子悪いの?』が息子の反応でした。それまで、私の話を、聞いていた彼に、自分が話すチャンスがめぐってきたのです。

 そして、今までの不満もふきだしました。……

 『456年は学校がつらかった。特に5年の時は学校でもガミガミ、家でもガミガミ。はっきりいって、自分の居場所がなかった。家のベランダから飛び降りようと思ったけど、……やめた。

 母ちゃんに自分の意見を言うと3倍になって返ってくる。だから言う気もなくなるし、こわい』……

 私は今までのことを心から詫び、息子が死なずによかったと思うと同時に、自分の不安から、息子に無駄な言葉を浴びせ、傷つけていたことに気がつきました。

 それに対して息子は、

 『でも、今、おれは気にしてないよ。56年の担任から教えてもらったこともあるし、今は楽しいし。母ちゃんのアドバイスも、役に立ったこともあるから』

 息子のこの言葉に本当に救われました。今も、つらかった過去のことを少しずつ話してくれています。私の黙って聞く習慣も身につき始めています」

 この例の中に、とても大切な二つのポイントがあります。

 「今までのことを心から詫び……」とあります。母親が子供の話を共感的に聞いてみて、子供の心が分かっていなかったと初めて「自覚」できたのです。

 二つ目は、「自分の不安から無駄な言葉を浴びせて、子供を傷つけていた」ことに気が付いたことです。

 「共感的に理解する」ことには、子供に次のような効果があります。

① 親の思いが伝わることによって、親の愛情を感じ、心が満たされる。
② 親に対する信頼感が深まる。
③ 自己を見つめる心のゆとりが生まれる。
④ 自分で解決しようとする意欲が湧く。
⑤ 自分が抱えている問題に気付く。
⑥ 自分で解決する能力が身につく。
⑦ 自立の心が育ち、思いやりの心が芽生える。

 何度も、「共感的に話を聞く」練習をし、自分のものとしてください。

 子供が自分の不安を打ち消す方向に向かうまで、親は黙って話を聞くようにしなければなりません。親は、子供を何とかしてやりたいと思っています。しかし、子供が何をどう感じているのかが分からなければ、「なんとかしてあげる」ことはできません。まず、子供のことを理解しなければいけないのです。

 黙って子供の話を聞くことは、とても忍耐が必要です。特に思春期の子供は、親の本気度を求めているので、親も誠意を持って取り組む覚悟が必要です。

 私たちは、人の心を共感する聞き方に慣れていません。ですから、「共感的聞き方」の練習をしてみる必要があるのです。

 それでは、「共感的な聞き方」を練習してみましょう。父と母で、あるいは親同士二人でペアを組みます。そして聞き手と話し手に分かれます。

① 聞き手は、話し手が何を言おうとしているのか、どんな気持ちなのかを理解してあげたいという気持ちで、共感しながら話を聞きます。質問や意見は言わないで、ただしっかりと聞くようにします。うなずいて聞くようにしてください。

4分たったら、交代して、同じようにしてください。

③「共感的聞き方」をしてみてどう感じたか、また、「共感的聞き方」をしている人に話してみてどう感じたか、互いに感想や意見を述べ合ってください。

 黙って聞いてもらうと、自分が受け入れられているように感じませんか。黙って聞いてあげることは、深い愛の行為なのです。子供に対しても、黙って聞いてあげることが大切です。親にとっては、つい言いたくなってしまう自分との闘いでもあります。

 どんな相談にも乗ってあげられる親になっていくことが大事なのですが、そのためにはよく聞いてあげることです。例えば、子供が不登校になったとき、「学校に行けないのは苦しいよな。つらいよな」と共感的に理解してあげるのです。共感的に理解してあげると、子供は喜び、親の愛情を感じます。そして、お父さん、お母さんを心配させていることに気付き、学校に行こうと思うようになるのです。

 共感してもらうと、子供の心はどんどん成長していきます。分かっていてもらっているという実感が、子供に余裕をつくりだし、心が育っていくのです。

 文鮮明(ムン・ソンミョン)先生のみ言(ことば)を紹介します。

 「絶対愛は、相対を絶対視する所で成立するのです」(『後天時代の生活信仰』63ページ)

 子供は親のものではありません。一人一人が神様の子であり、神様から個性を授かっています。ですから、子供を尊重し、心から尊敬しなければならないのです。

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 次回は、「積極的聞き方」をお届けします。


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