2022.07.05 12:00
世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
G7、NATOサミット~西側諸国が対露・中で再結束
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
今回は、6月27日から7月3日までを振り返ります。
この間、以下のような出来事がありました。
G7サミット開催、ドイツ・エルマウ(6月26日~28日)。イラン、新たに「BRICS」加盟申請(27日)。NATO(北大西洋条約機構)サミット開催、スペイン・マドリードで(28日~30日)。北欧2カ国NATO加盟をトルコが支持(28日)。日韓首脳が初の対面(29日)。マルコス氏、比大統領に就任(30日)。サハリン2、「ロシア企業に無償譲渡」の大統領令(30日)。米国、黒人女性初、最高裁判事が正式に就任(30日)、などです。
6月末、二つの重要なサミットが開催されました。
G7サミットとNATOサミットプラス4(日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランド)です。
ロシアのウクライナ軍事侵攻から6月24日で4カ月。「ウクライナ支援疲れ」の声が漏れ聞こえてくる状況下で、さらなる結束を促し、目標を明確にすることができたのです。
G7サミットは、ドイツのバイエルン州エルマウで6月26日~28日に開催されました。
ウクライナ、アルゼンチン、インド、インドネシア、セネガル、南アフリカ共和国が招待国として参加しています。
対ロシア制裁で、ロシア産石油の輸入停止措置は現在、原油高を招き現時点ではロシアの収入が増えています。もちろん中長期的にはロシアは孤立し、追い詰められることになります。
そして、ウクライナからの穀物供給の停滞で、アフリカや中東などでは食料不足が懸念され、約4億人が危機的な状況に陥ろうとしているといわれます。
「ウクライナ支援疲れ」の背景になっている現象です。
G7サミットでは、①ロシアへの制裁強化やウクライナへの支援の拡大 ②ロシア産の石油価格に上限を設ける措置の検討 ③食料の安定供給に向けた資金拠出を決定する、などの合意をしました。今後実行に移すことになります。
NATOサミットプラス4は、6月28~30日、スペインの首都マドリードで開催されました。「歴史的な会議」となりました。
まず、今後10年ほどの行動指針となる「戦略概念」を改訂し、戦略概念に初めて中国に対する言及が入ったのです。
戦略概念とは、NATOの今後10年間程度の国際状況分析や脅威認識、戦略方針を定めた文書をいいます。
NATOは、冷戦終焉(しゅうえん)後最大の節目を迎えました。
特にプラス4(日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランド)の招待により、欧州とインド太平洋が安全保障の弧で結ばれたのです。
特に韓国が参加したことの意味は大きいと言わねばなりません。
対ロシアだけでなく、中国の動きをけん制する態勢を整えようとしています。
NATOがアジアへと視野を広げる「歴史的な転換点」となりました。
基本的合意内容は二つです。
①ロシアのウクライナ侵略を踏まえた欧州防衛への原点回帰 ②中国の脅威を念頭においたインド太平洋地域への関与、となります。
NATOサミットの合意ポイントを列記しておきます。
◇スウェーデンとフィンランドの加盟に合意(実現は来年までに)。
◇ロシアを「最大かつ直接の脅威」と位置付ける(これまではパートナーとしていた)。今後、ロシアが力を入れているサイバー空間や宇宙などで能力強化。
◇有事対応の「即応部隊」を4万人から30万人超に増強。180日以内に追加で50万人を送れるようにする。
◇ウクライナの兵器・装備の「NATO化」を支援。旧ソ連時代の兵器や装備を置き換える。
◇中国が、加盟国の国益や安全保障に対して挑戦しているという認識の共有。
◇中露が連携して国際秩序を損なう試みを強化していると警戒。
◇日本などインド太平洋地域のパートナーとの関係深化、などです。
欧米中心の世界秩序が揺らぐ中で、両会議において最も注目されたのは、日本の今後の役割だったと言っても過言ではありません。