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第2部 カトリックの基礎を築く
③エイレナイオス

(光言社『FAXニュース』通巻869号[2004123日号]「キリスト教信仰偉人伝 李相軒先生のメッセージに登場した人々」より)

岡野 献一

 『FAXニュース』で連載した「キリスト教信仰偉人伝」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。(一部、編集部が加筆・修正)

キリスト教を異端から守る

 初代キリスト教会時代において、キリスト教がゆるぎない基盤を確立していくために、まず最初に越えなければならなかった試練が、ユダヤ教からの迫害でした。次にローマ帝国からの迫害であり、さらにはキリスト教内部から起こった異端(分派)との闘いでした。

▲エイレナイオス(ウィキペディアより)

異端との闘いで活躍

 異端の代表的なものにエビオン派、グノーシス派、モンタノス運動などがありますが、その異端と闘って、キリスト教の確立に大きな貢献をなしたのがエイレナイオス(130年頃-200年頃)です。彼は、特に最大の異端であるグノーシス派との闘いにおいて活躍します。

 エイレナイオスは、青年期においてガリア地方(現フランス)の宣教師となり、ローヌ河畔のリヨンで伝道をしていました。地方語を学び、地方語で説教をするなど、とても熱心に活動しました。

 177年、時のローマ皇帝マルクス・アウレリウスによるガリア地方のキリスト教迫害で、リヨンの司教ポテイノスが殉教します。エイレナイオスはローマ滞在中だったため難を逃れ、帰国後、司教に推挙されます。

 司教となった彼はさらに宣教に励んで、リヨンのすべての人をキリスト教に改宗させ、また、数多くの宣教師を諸地方へ派遣したといわれています。

 彼の活躍した時代は、帝国の迫害のみならず、キリスト教内部にグノーシス派がはびこりました。グノーシス派指導者ヴァレンティノスが自説こそ真のキリスト教であるという異説を広め、多くのクリスチャンが影響を受けたのです。ユスティノスがこれと闘いましたが、ユスティノス殉教後、その弟子タティアノスまでグノーシスの影響を受けるに及んで、彼は立ち上がり、その異端思想を批判して『異端反駁(はんばく)』を書きました。

 異端グノーシス派の思想を簡潔に述べると、おおよそ次のような主張です。天上にいたキリスト(救世主)は地上に降りグノーシス(知識)をもたらした。救いは曖昧な信仰によるのではなく、知識によってもたらされる(グノーシス派の名称はギリシア語の知識という語に由来)。キリストがこの世に来たのは、隠された奥義の「合い言葉」(知識)を人々に与えるためであり、その知識の言葉によって救われる、というものです。

再復説は蕩減復帰に通じる

 それに対し、エイレナイオスはレカピトゥラティオ説(再復説)を主張しました。それを簡潔に述べると、堕落した第一アダムが成し得なかったことを成し遂げるために、キリストは第二アダムとして来られたということです。彼は、「主は十字架での従順によって、アダムの不従順の罪を回復した」と主張します。このレカピトゥラティオという言葉には、帰一、再復、回復、総合、新開始するという意味が含まれています。

 すなわち、「アダムを再復(やり直し)するとは、同じ失敗を繰り返すのではなく、逆に失敗を取り戻し、新出発をなすことを意味する。アダムは不従順によって人類に滅びをもたらしたが、キリストはその生涯を通じてアダムの罪を再復して、人類に救いを与えた」と主張したのです。彼の思想は、統一原理の「蕩減復帰」と通じるもので、高く評価できます。この彼の主張によってキリスト教は異端思想から守られていったのでした。

 イエス様は、「聖書の中に永遠の命があると思って調べているが、この聖書は、わたしについてあかしをするものである。…あなたがたは、命を得るためにわたしのもとにこようともしない」(ヨハネによる福音書53940節)と嘆かれましたが、私たちは言葉で救われるのではなく、生命の木であるメシヤに接ぎ木されることによって救われるという事実を肝に銘じなければなりません。

 み言に、「み言の目的は実体であり、実体の目的は心情である」(『御旨の道』)。「真の父母と神様をどのくらい知っていますか。原理も重要ですが、原理の本体が真の父母なのです」(1993416日)。「真理とは何でしょうか。全世界の男性を代表する真なる男性がいれば、その真なる男性の四肢五体が真理なのです。真理は文字ではありません」(19881014日)とありますが、み言の実体であるメシヤこそが重要なのです。

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 次回は、「ヒエロニムス」をお届けします。