2022.06.09 22:00
新 堕落性の構造 31
現代人に不幸を招来する「心のゆがみ」。そんな悩みの尽きないテーマをズバッと解説! 人間堕落の根源からその原因を究明している一冊です。毎週木曜日配信(予定)でお届けします。
阿部 正寿・著
10 遠慮で隠す自己の罪
◉「ノー」と言えない日本人
日本人は「イエス」と「ノー」がはっきりしないといわれますが、むしろ、「ノー」と言えない民族のように思えます。私などもその典型で、デパートでネクタイの柄を見ていると、店員さんが来て、「これがとってもお似合いですよ」と薦められると、断るのが悪いような気がして、つい買ってしまいます。あとで、もっと安く、好みに合うのを見つけて、シマッタと悔しく思うのです。
これがアメリカ人になると、全く違ってきます。あるアメリカ人が、日本のカメラを買いたいというので案内しました。彼はあらゆるカメラをカウンターの上に並べさせて、納得のいくまで説明を聞きました。そして自分の気に入ったのがないからと、アッサリ全部断って、悠々と店を出ていきました。全くうらやましいナと思いました。
レストランで食事を御馳走してあげるとき、「何にします」と聞くと、日本人なら大体「何でもいいです」と答えます。一人が「カレーライス」と言うと、みな右へならえになってしまいます。
会合の時なども、遠慮して、思うことを十分しゃべらない人が多いのです。そのくせ、そういう人に限って、会合が終わったあとでブツブツ不平を言うのを見かけます。言うべき時に、言うべきことをはっきり言ってしまえば、スッキリして決定に従うことができるのですが、そうでないので、いつまでも不満が残るのです。
また、アメリカの例ですが、アメリカ人と会議をしたことがありました。日本だったら、発言しない人が必ずいるのですが、彼らはみな発言し、一人一人がちゃんとした意見をもっていました。しかし、自分の言うべきことを述べたあとは、決定には気持ち良く従います。民主主義の本当の姿を見た思いでした。
個人に個性があるように、国民にも国民性があります。遠慮してハッキリ言うべきことを言えないのは、日本人の良くない国民性のようです。
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次回は、「結果的に自分をかわいがる心」をお届けします。