2022.05.27 22:00
【テキスト版】
ほぼ5分でわかる人生相談Q&A
幸せな人生の極意!
第89回 発達障害を治すことはできますか?
ナビゲーター:阿部美樹
皆さん、こんにちは!
今回は、「発達障害を治すことはできますか?」という質問です。
発達障害は、大きく三つに分けることができるといいます。
第1は、こだわりが強い、人の気持ちに立って考えることが苦手、マルチタスクが苦手などの不器用さを持つという自閉スペクトラム症(ASD)です。
第2は、注意散漫、衝動的、多動性などの注意欠陥・多動症(ADHD)です。
第3は、読む、書く、計算するなど、特定の分野の学習だけが極端に困難な学習障害(LD)です。
第1のASDと第2のADHDの両方の症状を持つ場合が多くあるので、今回はその点について紹介します。
発達障害の人は、日常生活の中で生きづらく、嫌な体験をよくするようになります。
友達にいじめられる、忘れ物が多い、先生や上司に怒られるなどのつらい体験をするので、うつ傾向になり、不安が高まります。不安になるとさらにミスをし、人の気持ちに立つ余裕がなくなり、症状が悪化します。
そのつらい体験が生々しく記憶に残り、トラウマになって心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状を生んだりすることもあります。
発達障害の特徴として過敏さというものがあります。さらに二次障害として依存症のようになることもあります。
アルコール依存症、ギャンブル依存症、性依存症、買い物依存、ゲーム依存、さらには摂食障害や過食嘔吐(おうと)が癖になったりする場合もあります。
また、物を捨てられなかったり、鍵閉めの確認などの強迫性障害を合併してしまったり、虐待やネグレクト、家族間のトラブルが複雑に絡んでいる場合もあります。
これらは一つ一つ医療機関で治療を受けなければなりません。
こだわりが強いとか、人の気持ちに立つことが苦手などの自閉スペクトラム症は、薬物治療はなく、生活技能訓練(SST)や認知行動療法(CBT)で学んでいくことで課題を乗り越える方法があります。
一方、注意散漫、衝動的、多動性などの注意欠陥・多動症(ADHD)は、「コンサータ」「ストラテラ」「インチュニブ」といった薬物が、効果があるといわれています。
精神科医の益田裕介医師は次のように説明します。
「コンサータは、効果が12時間維持し即効性がありますが、依存性があり注意が必要です。しかし、集中力が高まったり落ち着いたりするので、ミスを防げるなどの効果があります。
ストラテラは、抗うつ薬にも似た効果があり、ノルアドレナリン系の脳神経細胞が育っていくのでミスをしにくい脳に変わっていくものです。
コンサータに比べてストラテラの効果が出るまで1~2カ月かかるなど、時間がかかるので、急いでいる場合はコンサータから服用することがあります。
インチュニブは、副交感神経系に影響を与えて衝動性を抑える薬です。副作用として眠気があったり、もともと血圧の薬だったこともあり、ふらついたりすることもあります。
他にも、子供用として『ビバンセ』という薬もあります」
注意欠陥・多動症(ADHD)は、薬だけでなく、生活技能訓練(SST)、認知行動療法(CBT)で学び、ミスを防ぐ技術として身に付けていくことも効果的です。
嫌な体験をして、その体験が記憶に残って認知の歪(ゆが)みを生んでいる場合は、「概念の拡大」が必要です。
「あの時、あの人はこういうことを考えていたのでは」という形で相手の気持ちや他人がどう考えるかを学ぶことです。一つ一つその都度体験したことを教えていく必要があります。
また、「人はこういう場面では、こんなふうに考える」という総論を学ぶことも重要です。
発達障害の人は、一見しっかりしているように見えて、常識に欠けていることがあります。
その背景には認知の歪みや興味の偏りがあることを理解しましょう。
このように、知識を身に付け自己理解を深め、他者を理解し、しなやかに考えることが重要です。
具体的には専門の医師の指導を受けながら取り組んでみてください。
皆さんからの質問をお待ちしています。
「人生相談Q&A」で、ほぼ5分でお答えいたします。
また、お会いしましょう!